落ち着く空間デザインとはどのようなものか?
どのような時に落ち着けているのか?
「カフェに入って、ゆったりとくつろげているときって、どんなときでしょうか?」
- ゆったりしたソファに座っている時?
- 視界に人の動きが見えない時?
- 景色が良い時?
- 個室の時?
人によって、感じ方は様々ですが、そのルールが実際にはあるのです。
雰囲気の良い店舗とはどういう時に感じるのか?
「雰囲気の良いお店とは、入った瞬間に感じることが出来ます。それはどんな時に感じているのでしょうか?」
- 開放感を感じるときでしょうか?
- 籠もれる時でしょうか?
- 誰かとコミュニケーションを取っている時でしょうか?
- ワイガヤして賑わっている時でしょうか?
- 静かに食事を楽しんでいる時でしょうか?
どれも目的やシーンによって、雰囲気の良さは変わっていくはずです。
雰囲気に影響を与えている空間要素とは何か?
壁と開口
建築的な要素として、雰囲気に影響を与えている一つとしては、壁や開口です。人の視線がまず向きやすい場所です。
そして、開放的、閉鎖的という2つの機能を持っています。
- 見渡せると籠もれる
- 開口部の大きさによって、覗くと一体感
- 壁の高さにより、空間の広さの認識
広いや狭い、開放的や閉鎖的などの感覚的なものに大きく影響を与えています。
天井と床
次に天井と床に関しましては、物理的には高さに影響を与えています。空間的な印象を与える影響はかなり大きいです。
天井が高い |
天井が低い |
|
空間の広さ |
広く感じる |
狭く感じる |
作業 |
発想しやすい |
集中しやすい |
気持ち |
気分転換しやすい |
落ち着きやすい |
内外の感覚 |
外部 |
内部 |
色と明るさ
色については、世界観やテイストに大きく影響を与えています。しかし、これには人それぞれの好き嫌いといった好みにも影響を与えています。
明るさは、日常と非日常、昼と夜といったシーンの連想から来ています。「天井と床」の項目と同じように分析してみます。
明るい |
暗い |
|
空間の広さ |
広く感じる |
狭く感じる |
作業 |
実務的な作業 |
考える作業 |
気持ち |
開放的な気分になりやすい |
落ち着きやすい |
内外の感覚 |
外部 |
内部 |
好き嫌いではなく「居心地の良い!」と好まれる店舗デザイン要素
居心地の良い場の3つの条件「眺望–隠れ場理論」
好き嫌いを除いて好まれる条件があります。
視界が遮られない場所と、身を隠すことができる場所、そして退路が備わる環境が好まれる現象のことを「眺望–隠れ場理論」といいます。
視界が通る空間
「眺望–隠れ場理論」では他者の視線にさらされることなく周囲を見渡せるような空間デザインを目指しています。壁に囲まれた閉鎖的な空間でも、いくつかの地点では視界がひらけて遠くまで見渡せることが出来る空間は好まれる条件になっています。
飲食店では良く利用されていて、外を歩く人に見られたくないが、景色がよく視界が通った空間を望まれています。また、床を一段上げることで、他の席との視線を変える手法も、視界が通る空間となります。
身を隠す空間
飲食店で席の案内をされる時、通路に囲まれた中央の席に案内されたとします。すると、
「奥の席でもいいですか?」
と良く言われるはずです。それは頭上に天井があり、出入りできる経路が少なく、身を隠せる空間ですと安心できる場所となるのです。
また、全面ガラス張りで360度開放的な空間に、一枚の壁を設置するだけで、居心地良くなったりします。これも「眺望–隠れ場理論」の3つの要件のひとつになっています。
退路が備わっている場
完全に囲まれていて、アクセス出来ない空間は、とても不安になるはずです。しっかりと席から退路が見えていて、なにか起きてもすぐに逃げることが出来る状況も好まれる環境のひとつです。
このように「眺望–隠れ場理論」は3つ要件を満たすことで、より好まれる空間デザインとなっていくということなのです。
実例で学ぶ店舗デザイン
ロフトは見渡せるが、見られづらい環境
個室であってもルーバーで外の空間が見え隠れする
退路が光で誘導されている
まとめ
居心地の良い雰囲気に近づけるためのノウハウとは、
1.視界が通る開口
2.身を隠す壁
3.退路が備わっている通路
「眺望–隠れ場理論」は、この3つ要件を満たすことで、また来たいと思える店舗デザインすることが出来ます。