照明デザインが飲食店に与える影響力
光を見てしまうのは本能?
大昔から人が見てきている光は、太陽と火。
太陽と火といる二つの光が本能的に人の心を落ち着かせます。
照明デザインは、太陽と火の性質を元に設計することが、人を惹きつけることにつながります。
太陽の光
太陽は時間軸による高さと色合いに関係しています。
朝に陽が上り、昼に頂点に立ち、夕方陽が沈みます。この時間軸の中で、光が変化しています。
照明に置き換えますと、朝日はオレンジ色の光で色温度が低いです。1900kと言われています。目線より低い位置に光源は位置しています。
昼になりますと、上からの光となり、青白い光で色温度は高いです。5300kと言われています。
夕日になりますと、朝日と同じような光環境になります。
違いは、夜は向かい空はコバルトブルーになり、次第に暗くなります。
火の光
火はオレンジ色の光で、色温度はかなり低いです。太陽の朝日や夕日と同じ1900kです。
また、光だけではなく、熱もあり暖かみある印象と、料理をするときに使われるので、美味しさも同時に伝えることができます。
飲食店にとっては、相性の良い光なのです。
人が光を感じる箇所
空間に与える光の影響力としましては、壁面照度が人が感じる明るい暗いと関係しています。
それは、人が空間に入って目に入る面積が一番大きいからです。
床や机の上は、立っている状態では一番見えません。特に床は家具を置いたりして見えなくなってしまいます。
天井は、床よりは見えますが、壁ほど見えていません。
光が当たる対象物の明るさによって、人は明るさを感じています。
マテリアルを当てる光の質
塗装やタイルなどの素材も、光が当てられて初めて活かされます。
その際に光の範囲、色温度、演色性、強さなど光の当て方や質によって、印象が大きく異なります。
どんなお店の印象にしたいのか?をまずは決めて、照明計画に入ることをオススメします。
高級感を感じられるライティング
直接照明より間接照明
直接照明とは、ダウンライトやスポットライトなどのように対象物を直接照らしている照明です。
間接照明とは、床、壁、天井に光を当てて、間接的に空間を明るくします。
高級感とは、空間の質の向上で感じることが出来ます。綺麗!繊細!など美に対して感動をした時に、感じやすいのです。
これは、光と影の関係が影響を与えています。
光と影のグラデーションは、とても繊細で美しいものです。当てられている壁などの素材が、光で見え方が変化したり、凹凸で細やかな影が生まれたりしますと、より繊細さが増し、感動を与えやすいのです。
この光のグラデーションを作るのが間接照明です。
上からより下からの光
朝日や夕日を見ますと、なぜか人々は感動します。この効果を空間のライティングデザインでも利用します。
光源を目線ラインまで下げてきます。その光源の向きを下から上へ向けます。こうすることで、朝日や夕日と近い環境を作ることが出来ます。
光と影を明確に作る
直接照明でも、光と影の演出で美しいと思わせることが出来ます。
光と影のコントラストです。
例えば、一輪挿しを壁面に飾っているとします。そこに一筋の光をスポットで当て込み、それ以外は影とします。一輪挿しがより強調され、その世界観に引き込まれます。
間接照明と直接照明を使い分けるライティングデザインを散りばめます。
結果、空間が上質になり、高級感を生んでいくことになります。
光を魅せる
空間を照らすのではなく、光自体を見せることで、気持ちがドキドキする光の演出もあります。
代表的なものとしましては、イルミネーションです。木々に飾られた無数の点光源は、人々を感動させます。
その他には、目を引く効果としまして、暗がりにある行灯や複数吊られたペンダントライト、シャンデリアなど、インパクトを与えるディスプレイとして使われます。
賑わいを与えるライティング
なぜ居酒屋っぽさが出るのか?
居酒屋の照明計画の特徴は、3つあります。
- 明るく感じる
- 賑わいを感じる
- 安さを感じる
これらを達成するためには、壁面照度を上げることにより、明るく感じさせます。
明るさで安心する
まず、壁面に当たる光を多くするには、照射角度が広角の照明器具を多く配灯することです。
さらに、壁面に飾り物やメニューに光を当てることも有効です。
提灯や裸電球で動きをつける
次に、賑わいを感じさせるには、光源をランダムに見せることです。
グラアレスの照明器具は、光源を人に見せないように設計されていますが、その逆のものを選びます。光源が見えるものを選定します。
また、ペンダントライト、提灯など直接光が見える器具を高さを揃えないように配灯していきます。
そうすることで、人は賑わいを感じやすくなります。
影を作らない光は、安そうに感じる
最後に、陰影をつけないことです。
光と影のコントラストを出来りつけないようにします。
また、住宅と同じような照明計画をしていくことで、家にいるように感じられます。
それは、日常と近くなるため安さを感じます。アットホーム感が出ると安心もします。
配光は上から下へ向けた光や散光された広がる照明器具を選定します。
美味しそうに見える光
ベースは2700k以下の色温度
基本的には電球色です。火に近い光で食材を照らすことで、調理をするイメージが無意識的に伝わるからです。
照明の色温度は2700k以下にします。
料理の色による
レタスのグリーンやトマトの赤など、野菜には発色の良いものが多いです。
魚や肉は、焦げた茶色などくすんだ色や刺身やレア肉の赤があります。
それぞれの色をより新鮮にはっきり見せる電球があります。
しかし、お客様の食事をするテーブルには、様々なお料理が運ばれてきます。
よって、そこには電球色のライトがバランスが良いです。
カラーの発色を見せる時は色温度上げる
食材をディスプレイして、シズル感を与える場合には、それぞれの食材の色に合わせた照明器具を選定することをオススメします。
スーパーで使われる照明器具で、魚や肉、野菜をより新鮮に綺麗に見せるライトです。
また、色温度を上げていくと、実際の物の色を出すことが出来ます。
その際には光が客席へまわることを避けるように配光計画します。
演色性を高くする
照明メーカーの出しているカタログに、Raという表記がされています。
これは演出性を表している数値です。選定の際の参考にします。
しかし、これは最後迷った時の選定基準にすべきで、基本的な要素は前述した項目を網羅した上での話になります。
料理とテーブルにコントラストをつける
料理が映えるように、光を集めます。逆にテーブルには、光をあまり落とさないようにしまして、コントラストをつけます。
そうすることで、より料理が引き立ちます。
→料理と皿とテーブルのカラーコーディネート
人を誘導する光
光で人を誘導
足元を照らすライン照明や行灯を設置することで、安心して奥へ進めます。
光は誘目性もあるためサインと絡めて、デザインすることで効果は倍増していきます。
光を見つけやすくするための影
光は周囲が暗がりであればあるほど、その効果は高く出ます。
ですので、光の効果を発揮させるには、影を作ることを意識して計画していきます。
真っ暗の中に行灯、暗がりに一筋の光など、光が幻想的に見えたり、気になる光は必ず影があるのです。
昼と夜の照明計画
昼メインの飲食店
ランチやお昼がメインのお店は、外の方が太陽光により明るいので、ガラス張り越しに店内はとても見づらいです。
そこで、前面道路に近い位置では、光源を見せたり、壁面照度を高くしたりします。
また、光を当てる対象物も設置することも有効です。
外の明るさに目が慣れているので、店内に入った瞬間は、より暗く感じやすいのです。
店に入った時に目を向ける先は、目を慣らすために明るめに照度を設定していきます。
例えば、メニューを発光する内照式看板にしたり、TVディスプレイにて広告したりします。
また、受付バックの壁面をライトアップします。その際に明るめの内装材にすれば効果はより出ます。
客席の基本的な照明計画は、昼の太陽と同じように、上から下への配光をメインに計画していきます。
夜メインの飲食店
夜になると、外より明るくなる店内は、外から見た際に見やすくなります。
配光計画も夜の太陽と同じように、下から上へ配灯を基本とします。
そうすることで、自然と人が居心地よくいれる空間になります。
昼と夜を両立した飲食店
では、昼と夜を両立させるにはどうしたら良いのでしょうか?
まずは調光をつけます。客席はもちろんですが、オープンキッチンの場合は、厨房内も調光させた方が良いでしょう。
昼は明るめに、夜は暗めに調光をかけます。
それでも対応できない箇所は、昼用と夜用の二系統設置します。
また、最近では色温度も変えれる照明器具があるので、必要に応じて選定するのも良いと思います。
内装工事費用を抑える照明計画
内装材より人に影響を与える照明
タイルや左官、クロスなどの内装素材も光によって印象は大きく変わります。
飲食店デザイン研究所では、コストが限られている際には、内装材を抑えます。
出来る限り、光の質は落とさないようにしています。
それは、ライティングの方が人を惹きつける効果が高いからです。
空間の質を下げずに内装コストを下げるには?
内装コストは、造作物と内装材が大きく影響を与えています。
その中でも、素材よりも人件費の方が大きいコストを占めています。
この事から、職人が効率よく作業できる設計にすれば、コストは落ちやすいのです。
照明デザインをこだわったところで、コストへの影響は少ないのです。
全体コストを落とす時には、造作物や内装材に頼るより、照明デザインを重視する方が、最終的に上質な空間が出来やすいのです。
照明器具自体のコストを下げるには?
照明メーカーは住宅向けと商業向けに作られています。カタログも異なることもあります。
住宅用照明は、流通量も多く、安価に設定されています。
逆に商業照明は、こだわりある照明器具が多く、光の質も高いのでコストも高く設定されています。
どちらが良いとかではありませんが、より安価な照明器具を選ぶ際は、住宅用照明を選定します。
照明器具の種類と特徴
ダウンライト
ダウンライトは、天井に埋め込んで取り付ける照明器具です。天井に埋め込んで設置するため天井面がフラットになるという特徴があります。また、照射するグレアレスダウンライトというものもあります。
形状は丸型や角形があります。
フレームの色も白や黒、その他シルバーやブロンズといったものもあります。
飲食店では、シンプルに光だけを見せる際に、照明器具を見せないようにします。
また、厨房内は湿気が多いため、防湿対応のダウンライトもあります。
スポットライト
光を当てる向きを変えることが出来る照明器具です。直接天井に設置します。
後から自由に光の向きを変えやることから、美術館や劇場で使われます。
飲食店でも、テーブルの位置を変えたり、壁にメニューを貼ったりした際に向きを変えれることが出来るスポットライトは採用されやすいです。
テープライト
床、壁、天井といった空間自体を照らす間接照明に用いられる照明器具です。テープのように小さく曲がるために、様々な箇所に設置できます。
ブラケットライト
壁面に取り付ける意匠照明。
ヨーロッパの街並み、和の空間など、世界観を伝える際によく利用します。
誘導する光としても利用されることが多いです。
ペンダントライト
天井からコードやチェーンで吊るす照明器具です。
高さを調節して器具の位置を決めます。
照明器具自体のデザインが大切になります。
光は全方向性や下方向性など周りのデザインにより変わります。
テーブルの照度としても使えますが、補助光として、スポットライトを使用することもあります。
スタンドライト
床やテーブルに置くタイプの照明器具です。
視線の高さまで下げて利用できるために、夜に落ち着く配光計画には利用されます。
平面的な場所を取るために、スペースは用意すら必要が出てきます。
厨房用照明
油や湿気に対応出来るタイプの照明器具です。
配光は広角が多く、種類に幅がないために、あまり選べません。
外部用照明
外でも使用できる防水タイプの照明器具です。
スポットライトやスタンドライト、スタンドライトが多いです。
土の地面に直接刺すスパイク型のスポットライトもあるので、庭のライティングに使われます。
赤提灯と白提灯
日本の商業で昔から使われている照明器具です。
サインとしても使われています。
形状は様々ありますが、和なテイストで使われることがほとんどです。
イルミネーション
クリスマスで木に飾られた照明器具です。お祭りなどのイベントに利用されます。
近年では、スマホで操作が可能でしたり、使用範囲が広くなってきています。今後の発展に期待の照明器具です。
新時代の照明器具
IOTを活用した人に合わせた照明器具が出てきています。今までは人感センサーや明るさセンサーで、照明をONOFF、色温度を変えることがメインでした。
これからは器具自体が動いたり、スマホで操作できたり、時間軸で動いたり、もっと人の行動に近づいた照明となります。
器具側の性能も上がり、システム側でも制御する事ができます。まずは、商業ベースから入り、いずれは住まいに普及していくことが予想されます。これからの照明業界がとても楽しみですね!