中国から学ぶ飲食店デザインの考え方の違い オペレーションの考え方編

中国の飲食店デザインをやっていて学んだこと

今回は、南昌市という中国の地方都市でのプロジェクトで学んだことを共有していきます。中国での飲食店デザインでは、日本とは求められていることが結構異なっています。そこでの気づきは、今後の日本の飲食店デザインに役立てていけると感じたからです。少しでも参考になれば幸いです。

日本の飲食店デザインは少人数オペレーション

人件費が高い日本

人件費が高い日本では、どうしても少人数でのオペレーションを考えた設計をすることになります。「ワンオペで厨房設計をしたい!」という要望が特に小さな飲食店では多くなってきています。それは、コロナで一度スタッフを手放した結果、人がなかなか集まらなかったり、人が急に辞めちゃうと、お店自体を休まなければいけなくなる事態を避けるためです。

人件費がまだ安い中国

一方、中国では人件費がまだ安く、人を多く配置することができます。高級店であれば、手厚いサービスをするために、「お客様一組にひとりのスタッフをつければ良い」という考え方ができるわけです。ご案内したり会計するスタッフ、注文を受けたり配膳するスタッフ、ドリンクを作るスタッフ、料理を作るスタッフ、洗い物をするスタッフとそれぞれ人を配置することができるわけです。

業務の兼任がないと、飲食店設計の考え方が全く変わる

そうできれば、そもそも兼業する業務が少なくなるので、洗い場とドリンク場を近くに設ける必要もなくなりますし、レジカウンターが厨房の近くになくてもいいんです。さらにはドリンク場と調理場だって最悪わけても、さほど問題が起きないということです。これって、飲食店設計をする上でかなり大きな違いなんです。

デザインとオペレーションの優先順位の違い

デザインか?オペレーションか?

もちろん効率的な設計をするのは、とても大切なことです。使いにくいより、使いやすい方がいいのは当然です。でも、デザイン性とオペレーションのどちらを優先したら良いのか?迷った時、今の日本の店舗(特に小規模店舗)では、オペレーションを優先するオーナーが多いはずです。

中国でデザインを優先できるのはなぜか?

一方、中国ではデザイン性を優先すべきと考える傾向があります。もちろんオペレーションがどうでも良いという考えはありません。できる限り少ない人材で運営できた方が、商売的に良いことはよく知っています。しかし、オペレーションを優先することによって、失われる空間の雰囲気は、もっとダメージが大きいと思うのです。お客様に特別な空間を提供するためなのか?なぜ、そこまでしてデザインを優先できるのでしょうか?

飽和したことによる空間デザイン価値の低下

中国では空間デザインに価値がある!

その答えは、中国の地方都市には、空間デザインに価値があるということです。どういうことかと言いますと、南昌市というその街には、日本の空間デザインがまだ少ないのです。合ったとしても空間デザインのクオリティが低いわけです。ちょっと昔の日本にあったような居酒屋が高級店としてあるくらいです。そもそも和食の料理店自体が少ないんです。そうなれば、日本の空間デザインが出来上がれば、他にないわけなので、価値が生まれてきます。

日本にはもう空間デザインに価値はないのか?

逆に今の東京には、空間デザインの価値が薄れてきているということです。それはなぜでしょうか?

ひとつに供給量がまず挙げられます。東京にはどこにでもおしゃれで綺麗な空間があります。これだけの空間デザインされた店舗数があれば、流石にその価値も薄れて当然です。

しかし、日本の地方都市はどうかというと、そこまででもありません。実はここにヒントは隠されているかもしれません。

人手不足と輸入に頼った結果、全てが高騰

デザインすればするほど、建築コストは上がりやすい

もう一つ空間デザインが優先させられない要因があります。それは経済的な面です。空間デザインをすればするほど、それは建築コストは上がっていきます。なので、最近では合板やモルタルの下地を使った原材料費や人件費がかかりづらい施工方法で、デザイン性を高める設計がよくみられます。それはある意味、日本人の本質的ないろんな物を排除する文化が、戻ってきているのかもしれませんので、いい面もあるかもしれません。

コロナで建材が高騰

建築資材も食品の原材料費もどんどん上がっています。それは日本は自国で物を作らず、海外から輸入しているからです。今回のコロナのように、海外からの物流がストップすれば、ものの供給が減り、価格上昇が生まれるのは当然です。今後は高いお金を提示しても、手に入らないことも出てくるかもしれません。そうなれば、建設費も高騰していく傾向になるのです。

人件費がかかるわりに、客単価が低い

飲食店を運営するには、費用がかかるのです。その大きな点は人件費です。飲食店で働く価値が低くみられています。要するに社会的立場が低くみられているという認識が、広がっているのが要因です。そうなると、働く人材が他の業界へ流れ、外食産業は人材不足になるわけです。そもそも日本全体に若い人が減っていて人が少ないのに、さらに減ってしまうのは、とても良い状況とは言えません。そうなるともちろん人件費が上がります。運営コストも上がります。その割には飲食店の客単価が安すぎるのです。

外食単価を上げたいけど、価値の提供が見出せてない

必然的に外食単価を上げるないといけなくなるわけです。なぜ上げられないのか?は外食する以外の価値提供が見出せていないからです。その辺のお話は、別の機会にさせていただきます。

作り手主導の計画に逆戻り

お客様は神様?

日本の飲食店はお客様精神がすごくあると思います。それは今でも。オープンすればそうなのかもしれませんが、オープンする前は本当にそういう思考で作られているのでしょうか?

オペレーション優先はサービス向上のためか?

いつしか日本の飲食店デザインでは、運営する側のオペレーションを優先するようになりました。それは生き残るためであったわけです。オペレーションをよくすれば、料理の提供時間も早くなるし、ガチャガチャした音やスタッフ間同士もスマートに動けて、お客さんも気になることもありません。

見せ場のない店舗にはワクワク感は生まれない

しかし、そのことで失われたこともあるわけです。見せ場を作りづらくなったわけです。今までさまざまん飲食店デザインをしてきましたが、多少使いづらくなったとしても、一発こだわりの見せ場をつくった店舗は、そこがやっぱり空間も売りになるわけです。その写真をみて、来るお客さんも多くなるんです。ひたすら使いやすくし続けた店舗には、特徴もなくなり、空間による集客力は低下していくのです。その代わりサービス力、料理の商品力は向上するかもしれませんが。

作り手主導の店作り

お店作りでの参加者は、オーナー、運営者、設計者、施工者、メーカーが集まって計画を練っています。これ自体は昔から変わっていないと思うのですが、その作り手側の視点がお客様のことをどれくらい考えているのか?その人数はどのくらいメンバーに参加しているか?この思考が、今はどちらかというと、作り手主導する店作りがされるようになってきているかもしれません。

私自身、この南昌市の案件で気づいたわけです。知らず知らずのうちに、作り方の思考そのものが変わってきていることに気づいたんです。皆さんはどうでしょうか?

それでもクオリティーの高い日本の飲食店

それでも日本のサービスや食事のクオリティが高いのは、切磋琢磨して考え抜かれた結果だと思います。こんなに素晴らしい日本の飲食店をもっと効果的に盛り上げたい物です。今はとても辛い時期かもしれませんが、これはチャンスだとも思っています。新しいビジネスモデルを取り入れた素敵な飲食店が増やせるように、わたしたちも精進していきたいです。

まとめ

今回のことをまとめると、集客性の高い店舗を作るには、デザインとオペレーションの優先順位は、バランスを見ることが大切です。なぜなら、オペレーションだけを優先すると、特徴のない競合が多いお店作りになってしまうからです。

人を集めるための飲食店デザインを考えるうえで大切なポイントは

①東京なのか?地方なのか?海外なのか?その場所の経済状況をよく見ること
②これからの人件費や建築費の高騰に対応する
③何をもってお客様視点なのかを再考する

上記のポイントを考えた上で、デザインとオペレーションを内装計画にうまく盛り込んでいきましょう。

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