仕上材が安いと、高くつく!?【素材の費用対効果で良し悪しを判断しよう!】

好き嫌いではなく、機能面だけを見よう

デザインプレゼンで空間のイメージパースで、自分の目指す空間を決めていきます。その際に、すでに仕上材(マテリアル)の色合いは決まります。しかし、具体的な仕上材(マテリアル)は、この段階では決まっていません。

設計打ち合わせが進みに連れ、デザインパースで空間イメージがつくと、次は仕上材を決めるマテリアル提案になります。ここで「イメージが合ってるなら何でもいいです!」と言うオーナーは、かなり多いです。しかし、仕上材(マテリアル)を決めるのは、工事コストと空間寿命の2つを決めることになります。機能面を注意して見ることが、提案される側は見る必要があります。

安いというだけで選ばないこと!長持ちするマテリアルを選ぼう。

工事コスト

工事コストは選定された仕上材(マテリアル)で決まってきます。個々での注意点は、カタログに載っている価格だけではありません。どういうことかといいますと、「仕上材(マテリアル)の価格+職人の人件費」で決まるからです。それが、タイル、クロス、左官、塗装などによって㎡あたりの施工単価が変わります。少なくとも難しい施工や少ない職種は高くなります。時間がかかる作業は高額になるのは当然なのです。

空間寿命

空間寿命は仕上材(マテリアル)の特性と空間の使用部分によります。よくぶつかる箇所(壁の手の触れる所、テーブルがぶつかる、モップが当たるなど)には、強度が高い仕上材(マテリアル)を使うと長持ちします。また、清掃が必要な箇所(厨房などの洗い場や揚げ場など)には、水や油がはねる場所に使うとキレイに保ちやすくなります。

素材だけ見てもわからない!空間全体のバランスはデザイナーに任せよう。

仕上材(マテリアル)の提案時、サンプルを見せてもらうことになります。コレ自体はとても大切なことです。イメージパースはあくまでイメージなので、それを見ながら実際使われる実物サンプルを見て判断します。しかし、小さなマテリアルサンプルをみても空間イメージが湧きづらいのです。メーカーショールームへ行って、大きな実物サンプルのほうがまだマシです。しかし、他の素材とのカラーバランスや空間全体のイメージはつきづらいはずです。そこにつきましては、空間デザインのプロであるデザイナー(設計者)に、おまかせすべきなのです。

仕上材(マテリアル)は工事見積にすべて反映される!

デザイン提案された色を経営者視点で見る

重要なのは、提案された仕上材(マテリアル)を経営者視点で見ることです。どれくらい美観が保たれるのか?施工コストはいくらになるのか?これは早い段階で把握する必要があります。なぜかといいますと、特に施工コストについては、プロジェクト後半の工事着工の手前で出てくるからです。そこで、大幅な変更はスケジュールにも影響し、中々変えづらくなるからです。そこで、ある程度相場観を把握しておくことで、事前に調整出来る所はしておきましょう!

仕上材(マテリアル)の特徴を簡単に抑えておこう!

タイル

耐久 ★★★★★
清掃 ★★★★
耐熱 ★★★★★
コスト ★★

タイルは全般的に清掃がしやすく、耐久性が高いものが多いです。しかし、タイルにも種類があります。磁器質タイル、陶器質タイル、せっ器質タイル、更にはスクラッチタイル、テラコッタタイル、テッセラタイルといった特殊タイルもあります。それぞれ特徴があるのです。熱に強かったり、吹きやすかったり、汚れを吸い込んでしまったり、衝撃に強かったり、すぐ割れてしまったりと様々です。

クロス

耐久
清掃 ★★
耐熱
コスト ★★★★★

クロスは種類がとても豊富ですが、耐久性が低いです。日本では一番素材の種類が多いのがクロスです。特にビニールクロスは、流通も優れており納期も短いので、安定供給が可能な素材です。それぞれ特徴が異なる種類のクロスがあります。ビニールクロス、紙クロス、織物クロス、木質系壁紙、無機質系壁紙、オレフィン壁紙です。壁の出隅の角や足元などよくぶつかる箇所では使用を避けるべきです。すぐに経年劣化してしまいます。

石材

耐久 ★★★★
清掃 ★★★
耐熱 ★★★
コスト

石材にはいろんな種類があります。大理石、石灰岩(ライムストーン)、蛇紋岩、御影石、砂岩、スレート(粘板岩)、大谷石・十和田石など(凝灰石)、鉄平石など(安山岩)、人造大理石及びテラゾーなどです。そして、性能も石よって様々です。

分類

比重

圧縮強度

(N/mm2)

曲げ強度

(N/mm2)

吸水率

(%)

耐熱度

(℃)

花崗岩

2.65

136.2

12.7

0.35

570

安山岩

2.5

90.8

7.7

2.5

1000

凝灰岩

1.5

8.2

3.2

17.2

1000

砂岩

2

40.9

6.4

11

1000

粘板岩

2.7

63.6

63.6

1000

大理石

2.7

109

10

0.3

600

石灰岩

2.7

45.4

0.5~5.0

600

コンクリート

2.3

13.6~22.7

1.6~4.5

*比重:単位面積当たりの重量で大きいほど、数値が高いほど重いということです。

*圧縮強度:床面にかかる荷重のように上からかかる力で、数値が高いほど縦に対する耐久性があるということです。

*曲げ強度:両側に支点がある部材の中央に対してかかる力で、数値が高いほど曲がっと時折れづらいということです。

*吸水率:石材が水を吸収する度合いを示し、数値が高いほど水を吸いやすいということです。

*耐熱度:物質が高温にさらされたとき、耐えうる温度です。

木材

耐久 ★★★
清掃 ★★
耐熱 ★★
コスト ★★★

木材には、広葉樹と針葉樹によって大きく性能が異なります。広葉樹は強度が強く、針葉樹は強度が低いです。その代わり床材で使う際に広葉樹は熱を伝えやすく、冬は冷たくなりやすく、針葉樹は熱は伝わりにくいので、冬は暖かく柔らかい感じを伝えます。これは一例ですが、木種により木の目や色も異なりますので、デザイン面でも影響を与えます。

ヒノキ(檜、桧)
赤松
チーク
クリ
曲げ弾性率
75000
90000
115000
125000
90000
圧縮強度
350
400
450
420
430
引張強度
900
1200
1400
950
曲げ強度
650
750
900
920
800
せん断強度
60
75
95
135
80
木口面硬さ(硬度)
3.2
4.0
4.3
4.5
板目面硬さ(硬度)
0.8
1.2
1.2
1.5

シート

耐久 ★★★
清掃 ★★★★
耐熱 ★★
コスト ★★★

シートは薄いシールを貼るイメージの素材です。近年のシートは強度もそれなりにあります。見た目は、木目調、石目調といろいろ出ています。不燃もとれていることが多いので、商業施設などの法規面での採用もされています。

・ダイノックシート

・リアテック

・ベルビアン

左官

耐久 ★★★★
清掃 ★★
耐熱 ★★★
コスト ★★★

左官は職人の手仕事で表情が変わりますので、人の手作り感を出したい時に採用しています。種類もいくつかあります。それぞれの性能は異なりますが、テクスチャ(表面の凹凸の柄)は職人の腕によります。

・漆喰

漆喰は、石灰に海藻のりや(すさ)などを混ぜて作られています。石灰は、サンゴ礁が長い年月をかけて陸地になった石灰鉱脈から採掘されます。お城や蔵の壁などに古くから使われており、倉敷美観地区の漆喰の白壁も有名です。

滑らかな質感が特徴で、防火材にもなることから、防火対策としても使われてきました。吸湿放湿効果があり、冬の乾燥や夏の湿気をコントロールして部屋を快適にしてくれます。また、シックハウス症候群を起こすホルムアルデヒドを分解する効果や脱臭効果も期待できます。

・珪藻土(けいそうど)

プランクトン(藻類)の殻の化石が海底に堆積してできた土が珪藻土です。左官材料として使う場合は、この珪藻土に糊を加えて固めていきます。 

吸湿放湿性能が非常に優れており、室内の湿度を快適に保ってくれる機能があります。においの吸着効果や耐火性もあり、自然素材で環境にも優しいことから、人気が高まってきています。

・聚楽壁(じゅらくかべ)

漆喰や珪藻土と同じような性質ですが、より土壁らしい質感になります。混ぜる土の色を変えることで様々な色合いを生み出すことができます。もともとは京都の聚楽第(じゅらくてい)近くの土を使っていたことから、聚楽壁と言われるようになりました。歴史的建造物やお茶室などにも使用されており、上品な仕上がりになります。現在は、産地に関わらず同様の仕上げになる壁を聚楽壁と呼んでいます。

・シラス壁(白州壁)

シラスとは、マグマが火砕流として一気に堆積したもので、南九州を中心に産出される火山噴出物です。そのため、火山大国の日本では入手しやすく、コストを抑えることができる利点があります。

シラス壁は、自然素材ならではのナチュラルな色調と素材感が特徴です。吸湿放湿性能が優れており、消臭効果も高く、結露やカビの発生を抑える効果もあります。

・モルタル

セメントに砂と水を混ぜて練ったものがモルタルです。モルタルは壁の仕上げ材としてだけでなく、壁や床そのものの材料として使用できます。コンクリート打ちっぱなしの壁がおしゃれで流行していますが、モルタルの壁もデザイン性が高く、スタイリッシュな雰囲気を出せると人気が出てきています

・ジョリパッド

ジョリパッドは、塗料に砂などを混ぜたアクリル系の壁仕上げ材で、砂壁状になる塗装剤です。耐久性や防火性があり、カビや藻が発生しにくくなっています。ローラーやコテで塗るだけでなく、水で薄めて吹き付けて仕上げることもでき、塗り方によってデザインの違いを出せるため、デザイナーズマンションなどでよく使われている左官材料です。180以上のカラーがあり、ボーダー・スクラッチ・ラフなど基本のパターンから、エイジングアート・水墨・イタリアアートなど個性的なパターンまで多種多様なラインナップがあります。

金属系

耐久 ★★★★
清掃 ★★★★★
耐熱 ★★★★★
コスト ★★★

建築でよく使われるものをピックアップしてみました。

・ステンレス鋼板

耐食性をはじめ機械的性質,耐火性、低温特性、靭性、加工性などに優れた材料です。また、用途に応じて「ヘアライン」、「鏡面」、「2B」、「縞板」等の仕上げが可能

SUS304 HL 単一方向に髪の毛のように細かいラインをつける仕上げです。傷が目だりにくいのでよく使います。

SUS304 2B 代表的なステンレス板です。耐食性に優れており厨房内でも利用されます。

SUS304 鏡面400# 2B材を400番バフによって研磨仕上げを施しています。鏡面に近い光沢をもった板です。

SUS304 縞板 「チェッカープレート」とも呼ばれています。倉庫イメージのとき滑り止めにもなります。

その他に銅板も同じ仕上げがあります。その他にバイブレーション、エンボスなどよく使われる仕上げがあります。

・鉄

鉄と呼んでいるものは、ほとんどが鋼という金属です。なぜなら、純度100%の鉄は非常に脆いので建材としては使えないからです。金属材料の中でも安価な材料です。しかし、生地のままだとサビなど耐食性が低い材料であることから、メッキ処理や塗装を施す必要があります。そのため、高級感のあるデザインには不向きとされて表面処理がされてきました。しかし、最近ではムラの良さ、質感から仕上げ剤としても採用されています。

・亜鉛メッキ

飲食店ですとダクトに使用されることがある亜鉛メッキ。これは鉄素地に亜鉛めっきを施す手法の1つで、鉄素地のサビを防ぐことが主な目的です。作られ方としては、鉄素地を浸した亜鉛めっき液は、電気を通すことで電気分解されます。これにより、鉄素地の表面に亜鉛めっきが積み重なります。その積み重なった亜鉛めっきは亜鉛めっき皮膜を生成するという仕組みです。

・銅板 銅は美しい色彩や光沢を持ちます。銅板は空気に触れると酸化が始まり、次第に褐色を帯び、美しい緑青へ変化します。(緑青)ステンレスの表面仕上と同じことが出来ます。

・アルミニウム鋼板

建材として使われる特徴としては、軽さです。鉄と比べて約1/3の重量なので、軽さが必要な家具、什器や窓のクレームにも使われます。

ダイカストという技術を使うことによって良質で精密な製品が大量に生産出来るようになります。大量生産ができるようになったことで、工業の間で本格的にアルミの普及が進んだのです。ダイカスト生産ができるようになり、日本は航空機の生産、電線の普及など大きく工業が発展します。現在はアルミの方が軽くコストも安く済むこともあり、コストで選ばれることもあります。

・ブリキとトタンとガルバリウム鋼板への移り変わり

ブリキとは、錫(スズ)めっき鋼板です。1700年頃、鋼板(薄い鉄板)は安価で入手しやすい上に、加工もしやすいので使い勝手のよい素材として使われていました。しかし、屋外や湿気の多い場所での使用した際に、錆や腐食が多くでるため、素材のままでは使用が難しい素材です。昔のイメージやラフな感じを意匠的に出す時に使われます。

・トタン

トタンとは、溶融亜鉛めっき鋼板のことです。鋼板の耐食性を向上させるためのメッキ法の中でも、耐食性や加工性、亜鉛のコスパの高さなどの理由から、普及してきました。建材としては、犠牲防食という特徴から外装建材として普及します。しかし、高い耐食性を発揮するのは中性の場合だけで、雨が流れていくと、亜鉛の腐食速度が速まる傾向があります。

・ガルバリウム鋼板

ガルバリウム鋼板は、アルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン1.6%から成る、アルミ亜鉛合金めっき鋼板です。1972年アメリカで生まれました。アルミニウムの特徴である耐食性、加工性、耐熱性、熱反射性と、亜鉛の特徴である犠牲防食機能により、従来の鋼板よりも、さらに耐久性に優れ、あらゆる用途に対応できるようになりました。トタンに比べると、約3~6倍の耐久性を持っています。

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