仕事終わりのスタッフとの贅沢な“2次会”
西麻布交差点の裏路地。乃木坂や表参道からもアクセス可能な立地に、静かに佇むこのバーは、私たち設計事務所のスタッフが“ここぞ”というタイミングで訪れるお気に入りの場所。仕事終わりにふらっと、でもちょっと背筋を伸ばして行きたくなる——そんなバーだ。
ポイント
- 表通りから外れた“隠れ家”立地
- 仕事終わりや2次会利用にちょうど良い雰囲気
- チーム利用でもプライベート感を損なわない空間設計
外観の印象──“バーの入り口”すらも隠された静けさ
建物自体は白くて無機質。目立つ看板もなく、階段を少し上った先にひっそりと現れる扉——それがこのバーの入口だ。ファサードデザインに一切の説明がないことが、逆に期待感を膨らませてくれる。
ポイント
- 認知性を抑えた外観で「見つけた感」演出
- 隠れ家をテーマにするなら、外装の情報量はミニマルに
- 路地と階段の動線も演出の一部
立体的な空間体験──「図書館×バー」が創り出す知的で妖艶な空間
ちょっと階段を登り、店内に入ると、空気が一変する。まるで“知識と沈黙”の世界へ足を踏み入れたような錯覚。四方を囲む本棚、深い色味の壁材、重厚なソファ、そして灯の少ないライティングが、一気に非日常へ誘ってくれる。
この店の最大の特徴は、「ブックテルメニュー」。本棚から本を一冊選ぶと、その本にちなんだ一杯のカクテルが供される。まるで物語の一部を味覚でなぞるような、五感を刺激する仕掛けだ。
ポイント
- 本を選ぶことでカクテルが提供される「ブックテルメニュー」
- 本棚がインテリアとしてだけでなく体験装置として機能
- 空間が物語と融合している点が唯一無二
プランニングの妙──“個”が守られる空間構成
Library Lounge THESEには、オープンなソファ席、壁で仕切られた半個室、完全な個室など、明確なゾーニングがなされている。人によって過ごし方が異なることを前提としたプランニングであり、設計者として非常に学びがある。
ポイント
- 選べる座席バリエーションがリピート利用に繋がる
- 音と光の制御で“プライベート感”を演出
- 客層の行動を逆算した空間デザイン
誰がどんな風に使っていた?──物語が生まれる夜の風景
21時過ぎの時間帯には、カップルや同僚、クリエイティブ業界風の人たちがちらほら。お酒を片手に静かに語らう姿、本を手にして物語に没頭する姿、あるいはノートに向かって何かを書き留めている人——
まさに「親交を深め、物語に没頭し、ペンをとる」場所。知的好奇心に火がつくような空間で、飲食店がこうした感情まで喚起できるという点に、空間デザインの可能性を感じる。
ポイント
- 顧客の行動が空間によって導かれている
- 「知的で静かな刺激」がターゲット層にフィット
- 長居したくなる空間設計は飲食店の理想
料理とドリンク──カレーとカクテルが織りなす味の物語
ここでは、名物として「カレーライス」が提供されている。バーでありながら、温もりのある食事ができるというのは嬉しい驚きだ。
またドリンクは、前述のブックテルだけでなく、リクエストすればその場の気分に合わせた一杯をカスタムしてくれる。
ポイント
- 食事メニュー(カレー)が意外性と安心感を両立
- メニューにない“感情から選ぶ一杯”が特別な体験に
- 飲みたいより「過ごしたい」で選ばれるバー
総評──「物語に没入する空間」がつくるリピーター
Library Lounge THESEは、単なるバーではなく「空間・本・人の関係性」そのものが商品である。
1999年の創業以来、「本に囲まれ、知的な刺激と静けさの中で過ごす」ことを大切にしてきた。これから飲食店を開業しようと考えているオーナーにとっては、空間づくりそのものにどれだけ物語を持たせられるかが、ブランディングの鍵になると教えてくれる場所だった。
ポイント
- “空間+物語+五感”で構成された強力な体験価値
- 長期運営の秘訣はコンセプトの一貫性
- 「語りたくなる体験」がリピーターを生む
店舗概要
項目 | 内容 |
---|---|
店名 | Library Lounge THESE(ライブラリーラウンジ・テーゼ) |
住所 | 東京都港区西麻布2丁目15-12 カルテットビル1F・B1 |
業態 | バー |
客単価 | ¥3,000~¥3,999 |
客席数 | 約60席 |
営業時間 | 月~土 18:00~翌3:00、日・祝 18:00~翌2:00 |
創業 | 1999年 |
公式サイト | http://www.these-jp.com |