大阪・福島(新福島)「焼鳥 B3」の店舗デザイン研究 ― モダンと温もりを両立させる「洗練の洞窟」

店舗概要

項目 内容
店名 焼鳥 B3
住所 大阪府大阪市福島区福島3-6-18 AchtHIKResidence福島 1F
業態 焼鳥
客単価 ¥6,000~¥7,999
客席数 17席(カウンター9席/ベンチソファ8席)

大通りから一歩奥へ — 「一見、焼鳥に見せない」外観の戦略

カフェライクな端正さと「透明なサイン設計」

土曜の夕方、家族と訪れたのは以前から気になっていた大阪福島の焼鳥店「B3」。新福島駅からも近く、18時の予約で訪れたが、すでに全席予約で満席だった。

店頭は従来の焼鳥店のイメージを覆すもの。大通りから一本入った路地に現れる外観は、焼鳥店というよりカフェのような端正さ。ガラス越しにカウンターや客席が見え、「ここがB3だ」と分かる“透明なサイン設計”が印象的だ。

焼鳥という大衆的業態でありながら、外観から「日常の一段上」を提示する。この“焼鳥に見えない外観”は、店舗デザインとして強力な差別化要素になっている。

ポイント

  • 大阪福島エリアで際立つ「焼鳥に見えない外観」
  • ガラスファサードで“覗かせる”デザイン
  • 路地奥の立地=心理的な「非日常スイッチ」

扉の先は“洗練の洞窟” — 第一印象で心拍数を落とす光と素材

無機×有機のバランスが生む安心感

扉をくぐると、広がったのは「洞窟」を思わせる無機質で洗練された空間。中心に走るのはベージュ系のテラゾー天板カウンター。暖色系の骨材を使うことで、硬質素材に温もりを加えている。

カウンターの角はR(曲面)処理で柔らかさを演出。床はモルタル、壁は土壁風塗装。和風が多い焼鳥店の中で、あえて洋の素材で構成するモダンデザインは、新鮮さを強く印象づける。

照度を抑えたライティングと、スタッフの落ち着いた声。空間全体が「静けさ」までデザインされていると感じた。

ポイント

  • テラゾー天板×暖色骨材=冷たさを抑える工夫
  • 曲面処理で柔らかい陰影を演出
  • 光と音量を含めた「体感設計」

素材・色・カタチの作法 — 「モダンなのに冷たくない」の理由

素材の選び方と“配色の温度管理”

一般的に「新福島駅周辺の焼鳥店」は木材や和紙を多用するが、B3は洋素材で統一したモダンデザイン。塗装・モルタル・テラゾーという無機素材を組み合わせながら、暖色の骨材や曲線を活用することで、冷たさではなく“温かいモダン”を成立させている。

設計者視点で学べるのは、素材選びだけでなく、配色や照明の当て方が空間印象を決定するということ。B3は「半歩上質」の積み重ねで空間を成立させていた。

ポイント

  • 素材選定+配色+照明が印象を左右する
  • 無機素材でも暖色と曲面で居心地を確保
  • 「半歩上質」の積層でコストとデザインを両立

席配置にみる「二面性」 — 17席の空間を豊かに使う

カウンター=ライブ、ベンチ=会話

B3の店内はカウンター9席、ベンチソファ2卓の計17席。だがこのシンプルな構成が見事に機能している。

  • カウンター席:焼き台のライブ感を楽しむ舞台。炭の音や香り、焼き手の所作を間近で体感できる。
  • ベンチソファ席:庇のある設計で半個室的。静かに会話を楽しめる空間。

同じ空間にありながら、ライブ感と会話重視の二面性を両立。小規模店舗ながらターゲットの幅を広げる設計だった。

ポイント

  • 17席で「ライブ」と「会話」の二面性を実現
  • カウンターは演出、ベンチは心理的安心感
  • 少席数でもシーンを拡張する設計力

客層とターゲット — 「背伸びしない大人デート」に最適

若い世代にもインバウンドにも響く空間

訪問時の客層は20〜30代のカップルが中心。価格帯はやや高めだが、カジュアルさと高級感を絶妙に組み合わせることで「背伸びしない大人デート」の場として成立していた。

また、和風を排した非和風デザインは、インバウンド需要にも応える強みになると感じた。大阪福島エリアで観光客に紹介したい焼鳥店の一つになるだろう。

ポイント

  • 若い世代カップルのデート需要を的確に掴む
  • 非和風デザイン=インバウンド客にも好相性
  • 親しみやすさと高級感の両立

料理とドリンク — 五感に訴える演出

一本ずつ出される串とペアリングの楽しみ

料理は造り盛り、甲州地鶏のたたきから始まり、焼鳥8種と野菜串を一本ずつ。部位ごとに違う薬味や盛り付けで、飽きることなく最後まで楽しめた。

〆には追加で親子丼。炭火の香ばしさと卵の濃厚さで、食後の満足感がぐっと高まった。

ドリンクは日本酒・ワインの充実に加え、飲み比べセットやプレミアムティーも。酒を飲まない人も楽しめるように工夫されているのは、飲食店デザインとして顧客体験を拡張する大事な要素だ。

ポイント

  • 一本出しの串=会話とテンポを生む設計
  • ドリンクは「飲み比べ」で体験を厚く
  • プレミアムティーで嗜好差を吸収

オペレーション設計 — 少人数で効率的に回す仕組み

I型カウンターとバック厨房の役割分担

当日のスタッフは調理2人+ホール2人の計4人。小規模だが、料理提供は極めてスムーズだった。

  • カウンターはI型=受け渡し短縮
  • バック厨房=仕込みや盛り付けを担当
  • 客のペースに合わせて料理が出る=待ち時間が少ない

「見せる部分」と「隠す部分」を分けたオペレーション設計が、満席時でも空間を乱さない理由だ。

ポイント

  • I型カウンターで効率的動線
  • バック厨房で裏方処理を吸収
  • 少人数でも成立するオペレーション設計

コストとデザイン — 「半歩上質」の積み重ね

投資と引き算のバランス感覚

会計は2人で13,670円(6,835円)。料理・空間・接客すべてを考えると十分にコスパを感じた。

テラゾーや塗装仕上げはコストがかかるが、照明や装飾を引き算することで全体バランスを取っている。投資と削減のメリハリこそが、持続可能な店舗デザインを成立させる要因だった。

ポイント

  • 素材には投資、演出は最小限
  • コストバランスで“長持ちする空間”を確保
  • 「半歩上質」を積み重ねる戦略

総括 ― 焼鳥 B3から学ぶ店舗デザインの本質

「焼鳥 B3」は、大阪福島・新福島エリアで“モダンな焼鳥店”として成功するためのモデルケースだと感じた。

  • 外観は焼鳥店らしさを抑え、カフェのように洗練
  • 無機素材に温度を入れた居心地のあるモダンデザイン
  • 17席でライブ感と会話空間を両立
  • I型カウンター×バック厨房で効率と演出を両立
  • 投資は素材に集中、演出は引き算

「背伸びしない大人デート」にも「インバウンド向け大阪グルメ」にも対応できる空間。飲食店開業者にとっては、“誰にどう見せたいか”を設計段階から言語化し、空間・オペレーション・コストに落とし込むことの重要性を教えてくれる好例だ。

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