飲食店を開業する際、成功するためのデザインやオペレーションはどうあるべきか。実際に足を運び、体験した人気焼肉店「ニクアザブ西麻布店」から、開業準備に役立つポイントを設計者の視点で解説します。
立地と外観デザイン
「知る人ぞ知る店」でも繁盛する立地戦略
西麻布の裏路地に入り、少し奥まった場所にあるこの店。道を歩いていると、一見見落としてしまいそうな外観だが、通りの角を曲がると、店内の明かりとともに活気のある雰囲気が伝わってくる。カジュアルながらもスタイリッシュなデザインで、ガラス張りの店構えが通行人の目を引く。
扉を開けると、焼肉の香ばしい香りが漂い、食欲をそそる。半地下に位置しているため視認性は低いが、こうした隠れ家的な立地は、特定のターゲット層にはむしろ魅力的に映る。知る人ぞ知る場所としての価値があり、口コミやリピーターが自然と増えていく仕組みになっている。
ポイント
- 目立たない立地でも、人が集まるエリアを選ぶことが重要。
- 外観デザインは「入りやすさ」を意識。視認性が低くても、ガラス張りや照明を活用する。
- 路面店でなくても、口コミやリピーターによる集客が期待できる。
内装デザインと空間の工夫
清潔感+開放感=快適な空間づくり
改装された店内に足を踏み入れると、白を基調としたタイルの壁と、温かみのある木のテーブルが目に入る。全体的に明るく、モダンで洗練された印象を受けるが、決して冷たくなりすぎず、落ち着いて食事ができる空間となっている。
オープンキッチンのカウンターでは、シェフたちが手際よく肉を焼いている姿が見える。火が立ち上がる瞬間、カウンター席に座るお客さんは一瞬息をのむ。その後、スタッフが焼き上がった肉を丁寧に客の前へと運び、食べ方を説明する。ここでは単に「食べる」だけではなく、「見て楽しむ」ことができるのだ。
ポイント
- 清潔感のあるデザインは、顧客の印象を左右する重要な要素。
- オープンキッチンは、調理の様子が見えることで信頼感を生み出す。
- 店内のレイアウトは「子連れでも快適」に配慮し、ファミリー層も取り込める設計。
座席レイアウトの工夫
限られたスペースを広く見せるアイデア
店内のレイアウトも工夫されている。手前には8人が座れるテーブル席、奥にはカウンター席とボックス席を配置。座席の背もたれをなくし、全てベンチシートにすることで、店内の視界を遮るものが少なく、広く見せる工夫がされている。
さらに、ボックス席はあえて半個室にならないように設計されている。これにより、店全体に一体感が生まれ、活気のある雰囲気を作り出している。居心地の良さと、スペースを有効活用する設計が光る。
ポイント
- 背もたれをなくすことで、視線の抜けが良くなり、開放感が生まれる。
- カウンター席とボックス席を組み合わせ、多様なニーズに対応できるよう設計。
- 限られた面積でも、座席配置次第で広がりを感じさせることが可能。
ターゲット層と集客戦略
若者×ファミリーの共存が成功のカギ
訪れた時間帯では、20~30代の若者が中心だったが、ファミリー層の利用も見られた。小さな子供を連れた家族が、スタッフに気軽に話しかけ、肉の焼き加減について質問している。その姿を見て、この店が単なる「おしゃれな焼肉店」ではなく、幅広い客層に愛されていることがわかる。
ポイント
- ターゲット層を明確にし、それに合わせたデザイン・メニュー構成を考える。
- 早い時間帯はファミリー層、遅い時間帯は若者層と、利用時間を想定した戦略が必要。
- 稼働率を最大化するために、ピークタイムを意識した施策を打つ。
まとめ:飲食店開業で意識すべきポイント
「ニクアザブ西麻布店」の成功から学べる、飲食店デザインと運営のポイントを整理すると以下のようになる。
- 目立たない立地でも、口コミとリピーターを意識したデザイン戦略を立てる。
- オープンキッチンでライブ感と安心感を提供し、清潔感のある内装を整える。
- 店内レイアウトは、限られたスペースでも広く見せる工夫をする。
- ターゲット層に合わせたメニューと価格帯を設定し、リピートしやすい仕掛けを作る。
- 少人数でも高品質なサービスを提供できるよう、動線と役割分担を考える。
飲食店を開業する際には、これらの要素を意識し、店舗デザインや運営計画を構築していくことが成功への近道となる。
店舗情報
店名 | ニクアザブ西麻布店 |
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住所 | 〒106-0031 東京都港区西麻布4丁目11−3 横山ビル 1F |
業態 | 焼肉 |
客単価 | ¥6,000~¥7,999 |
客席数 | 27席 |