オペレーションを効率化するために、一番重要なポイントは、厨房と客席の接点設計です。なぜなら、料理の出入りが一番多い場所だからです。
厨房と客席の接点設計を考えるうえで大切なポイントは
①オペレーションが悪いとどうなるかを理解する
②料理(ドリンク)を作って、提供するまでをイメージする
③誰に何を頼むかを把握する
です。これを実現する方法として3つあります。
①内装設計と厨房設計を同時に連動させること
②人とお皿とグラスの流れを見ること
③インテリアデザイナーと厨房メーカーの情報共有させること
上記のポイント、デザインパターンを活用することで、筆者が実際に作った店舗では、使いやすい厨房設計になっています。重要なポイントとして、ぜひ覚えておきましょう。
上記のポイントを一つ一つ細かく解説していきます。
サービス低下の原因!意外と多いデシャップや洗い場が使いづらい店舗
なぜ、デシャップと洗い場への導線が使いづらいとサービス低下するのか?
厨房で一番混雑する場所が、デシャップや洗い場への導線です。ここの設計を明確にしておくことが、厨房の使いやすさにつながります。もし、計画を練っていないと、どうなるのでしょうか?
料理の提供時間が遅くなる
オーダーを受けてキッチンスタッフに伝わるまでの導線をシンプルにすべきです。
もちろんPOSシステムを入れることも重要ですが、アイコンタクトが取りやすい計画にすべきです。
料理が出来上がり、ホールスタッフへの伝達がしにくい、置く場所が下げものと兼用していて分かりづらい、置き場が狭いなどにより、うまく受け渡しが出来ずに提供時間が遅くなってしまいます。
スタッフの不満が蓄積
デシャップスペースが小さいと、料理やドリンクが置くことが出来なかったり、落としてお皿を割ってしまったりします。そうすると、スタッフ間の関係も悪くなり、スタッフのストレスや不満が蓄積されます。
厨房が汚いイメージがつく
お客様からバタバタしている状況が見えるのも良くありません。忙しそうに見えてしまい、店員を呼びづらい雰囲気を作ってしまいます。また、洗い物が積み重なっている状態を見て、不快感を与えてしまします。
そうなると次はこの店来たくないな。と思われてしまいます。
厨房設計と客席設計の分離が、失敗の最大の要因!
なぜ、客席プランと厨房プランは別々に作っているのか?
客席プランやデザインの専門はインテリアデザイナーです。また、厨房プランは厨房メーカーの設計者が、専門で考えています。このこと自体は、まったく問題ありません。むしろ、それぞれのプロフェッショナルが、数多くの経験値と知識をもとに設計を行っているので、個々はクオリティが高いのです。
どうして、客席と厨房は別々にプランすることが問題なのか?
客席
雰囲気や客席同士の距離感などを重要視して、プランニングを行います。厨房への導線も使いやすく設計します。
厨房
調理場、ドリンク場、洗い場をゾーン分けをしてオペレーションを良くするための設計をします。
その二つを組み合わせで完成させます。
人の動きやお皿の流れを初期に設定していないと客席と厨房の接点を調整しきれないことが多いのです。結果使いにくくなるのです。
客席内はインテリアデザイナー。厨房内は厨房設計者。と個別に分けていると、「客席と厨房との接点」は誰も設計されないことが多いのです。
「客席と厨房の接点」こそが、業務効率化、サービス力向上につながるのです。
どうしたら客席と厨房の接点が使いやすくなるのか?
サービス提供されるまでの流れをイメージ
注文を受ける → 料理・ドリンクを作る → テーブルに運ぶ → 食器を片付ける→洗う
この行動の間には、人と人が連携しています。客席担当のホールと厨房担当の料理人との連携部分が「客席と厨房の接点」です。
それを平面プランに書き込みイメージしてみます。
人の流れとお皿やグラスの流れを考えると、問題箇所が浮き彫りになる
平面プランを見ながら、お皿やグラスの流れを矢印で書いていきます。すると、線が重なったり、交差していたりする場所が出てくるはずです。現状の問題点です。
そのようなポイントひとつひとつを解決していくと、オペレーションのよいプランになっていきます。
客席デザインに厨房レイアウトも影響がある!?
最近はオープンキッチンといった「見せる厨房」が多く見られてきています。
そうすると、厨房自体もデザインの要素に入ります。厨房内には、見せたくないものが数多くあります。
例えば、冷蔵庫内の市販のパッケージや煩雑に置かれた食材、溜まっている洗い物、ゴミ箱などです。見せるところは見せて、隠すところは隠すと行った客席デザイン側から見た厨房レイアウトも必要になってくるのです。
どのようなデザイナーや内装設計者、厨房設計者に頼めば良いのか?
誰に何を求めるか?を明確にする
飲食店のプランは、空間デザイン、内装設計、照明デザイン、設備設計、厨房設計と様々な計画があります。今回は内装設計と厨房設計に絞ってお話しします。
何を誰が出来るのか?業務範囲を一覧にしてみました。
・空間デザイン
インテリアデザイン事務所、設計事務所、設計施工会社
・実施設計
インテリアデザイン事務所、設計事務所、設計施工会社
・厨房設計
厨房メーカー、設計施工会社
・オペレーション計画
インテリアデザイン事務所、設計事務所、設計施工会社、厨房メーカー
※上記は表でかく。
何を提案してもらえるか分かる3つの質問
基本的には営業やデザイナーに伝えて提案をもらうことになります。しかし、考える人は誰なのか?会社が異なることがほとんどです。また、検討される業務範囲が重なれば、より良い提案を受けることが出来ます。そこで3つの質問を投げかけてみましょう!
- 厨房レイアウトの希望は、どなたに伝えればよいですか?その提案説明を頂きたいです。
- オペレーションで迷っています。どなたに相談すればよろしいですか?
- 厨房の演出をしたいです。良い見せ方を提案してもらえますか?
判断基準リスト
具体的な例から見て参考にしよう!
キッチン イチニョ
デシャップのフードとドリンクを同じ場所で出しています。小スペースの厨房に高さを利用してデシャップしています。洗い場への下げ物は、厨房に入らずに直接ソイルドテーブルへ渡せる棚を用意しています。
そして、キッチンからホールへの受け渡しスペースは、一枚の壁で見えづらくすることで、客席の空間は落ち着いた雰囲気を保っています。
ニクータ
三つのアプローチのあるI型厨房。オープンキッチンになっています。客席に近い左手にドリンク場を設けることにより、ホールとの連携をスムーズにしています。右手にキッチンスペースを設けて、熱源を客席から少しだけ離すことで温熱環境を保ちやすくしています。また、トイレへの導線を作っているので、ライブ感も感じられます。
ドリンク場とキッチンの間に洗い場への導線を最短距離でとっています。これが焼場から料理が出来上がり盛り付けへの流れと二層シンクへの洗い物を置く流れとの、最小限の導線の交差で済んでいます。
まとめ
これを実現する方法として3つあります。
①内装設計と厨房設計を同時に連動させること
②人とお皿とグラスの流れを見ること
③インテリアデザイナーと厨房メーカーの情報共有させること
上記のポイント、デザインパターンを活用することで、筆者が実際に作った店舗では、使いやすい厨房設計になっています。重要なポイントとして、ぜひ覚えておきましょう。