札幌すすきの「63 ロクサン ジンギスカン」に学ぶ ― コスパと設計が生み出す“満足感デザイン”

店舗情報

項目 内容
店名 63 ロクサン ジンギスカン
住所 〒064-0806 北海道札幌市中央区南6条西3 おふく会館 B1F
業態 ジンギスカン
客単価 ¥5,000〜¥5,999
客席数 50席

北海道出張の夜、偶然見つけた「地下一階の隠れジンギスカン店」

札幌出張の夜、後輩と「せっかくだから北海道らしいものを食べよう」と話しながら、Googleマップを開いた。

目に留まったのが「63 ロクサン ジンギスカン」。

評価が異様に高く、食べログでも星3.7を超えている。

「この立地でこの評価は気になる」と思い、予約して訪問した。

だが、現地に着くと最初は戸惑う。

「おふく会館」という雑居ビルの地下、看板も控えめで、通りから少し外れた位置。

階段は薄暗く、「ここで合っているのか?」と一瞬不安になる。

しかし、扉を開けた瞬間に空気が変わった。

店内は明るく、活気と笑い声に包まれている。

炭火の香りが漂い、白を基調とした清潔な空間に照明が柔らかく光る。

その瞬間、「あ、これは当たりだ」と感じた。

【POINT】入口デザインの学び

  • 地下店舗では“心理的不安”を“発見の喜び”に転換する導線設計が重要。
  • 階段は照明・音・香りの3要素で「期待の高まり」を演出できる。
  • 隠れ家感を活かすには、見つけた瞬間の光の印象を意識する。

白と煙の共演 ― シンプルが生む“余白のデザイン”

中に入ってまず感じたのは、「空間の余白」。

壁も天井も白く、間接照明だけで全体が照らされている。

ステンレスのダクトが整然と並び、焼肉店特有の“雑多さ”がない。

シンプルだが、居心地がいい。

炭火の煙がふわりと漂い、人の声と笑いがその空間を彩る。

装飾で見せるのではなく、“人と煙の熱量”で魅せる空間デザイン。

家具もナチュラルウッドで統一され、温かみを持たせている。

全体的に“素材のままの質感”を活かしている印象で、

過度な演出がないからこそ、料理と空気感が主役になっていた。

【POINT】空間デザインの視点

  • 白を基調とした「背景のデザイン」が料理を引き立てる。
  • 煙や人の動きも“演出要素”としてデザインされている。
  • 素材の統一と照明の柔らかさで安価でも高級感を演出できる。

レイアウトと導線 ― 少人数でも回せるオペレーション設計

入口すぐ横に受付と厨房があり、奥に広がる客席を一望できる。

この“視線の通る構成”が非常に良くできていた。

厨房からホール全体を見渡せるため、スタッフが少なくても全体が把握できる。

声を掛けやすく、料理のタイミングも取りやすい。

5〜6名体制で50席を回していたが、全くバタついていない。

また、オープンカウンター式の厨房は「音と香り」が店全体を包む。

調理のライブ感が、空間の一部として成立していた。

導線は最小限、効果は最大限――まさに“オペレーションをデザインする空間”だった。

【POINT】導線とオペレーション

  • 厨房・受付・ホールの一体配置で導線を最短化
  • オープンキッチン化で声と活気が空間に流れる
  • 視線を遮らない構成が少人数運営を支える設計になる。

メニュー設計 ― “迷わせないUX”が生む快適体験

メニューを開くと、まず目に入るのは「コース」3種。

食べ放題、飲み放題、通常コース。

アラカルトもあるが、初見の客が迷わず選べる構成だ。

今回はおすすめコースを選択。

ラム、マトン、野菜、締めまで一通り揃い、テンポよく運ばれてくる。

全体の量感も絶妙で、“食べ疲れない満足”を設計している印象だ。

価格は一人5,500円ほど。

この満足度でこの価格は、まさに“体験コスパ”の高さを実感する。

豪華ではないが、全ての要素がバランスしている。

【POINT】メニューと価格のデザイン

  • コース中心の構成は顧客の迷いを消すUX設計
  • 料理テンポとボリュームの設計で“食後の満足感”をコントロール。
  • コスパの高さは、心理的満足度=再訪意欲につながる。

ジンギスカンという“体験のデザイン” ― 五感を刺激する構成

鉄板が熱され、ラム肉が焼ける音と香り。

その煙が空間を柔らかく満たす。

これこそが、この店の最大の演出だと思った。

肉汁が中央から流れ落ち、野菜を包み込みながら香りを立てる。

味覚だけでなく、聴覚・嗅覚・視覚が同時に働く。

それが、自然と会話を生み、人を笑顔にする。

特に印象的だったのは、スタッフが一言添える「焼き方の声掛け」。

その短いガイドが、体験を安心に変えていた。

【POINT】五感デザイン

  • 香り・音・煙をデザイン要素として空間に組み込む。
  • 体験を“自分で完成させる”構成で没入感が生まれる。
  • スタッフの声掛けが体験デザインの一部になる。

集客とビジュアル戦略 ― “見つけやすさ”より“見せたくなる”へ

この店を見つけたのは、Googleマップの星評価4.4。

つまり、最初の入口は「空間」ではなく「デジタル」だった。

地下というハンデを、オンライン上のビジュアルで補っている。

白い壁、ステンレスダクト、炭火のオレンジ。

写真が美しく映える構成だから、口コミ写真の統一感がある。

結果的に「綺麗そう」「清潔そう」という印象を与え、

レビューと写真が“行きたくなる理由”をつくっている。

【POINT】デジタルブランディングの視点

  • Googleマップは現代のファサードデザイン
  • 写真の色調統一でブランドイメージをコントロール
  • 口コミの積み重ねが空間の延長として機能する。

改善提案 ― 「入りたくなる」「また来たくなる」を設計する

空間全体の印象は良いが、導線に“演出の余白”がある。

特に階段アプローチ。

ここにもう一工夫があれば、“地下への不安”を“期待”に変えられる。

例えば、階段手すり下にLED照明を仕込み、

下方向に光を流すだけで空間の印象が劇的に変わる。

また、壁面に羊の影をモチーフにした照明アートを加えると、

SNSでもシェアされやすい「記憶に残る要素」になる。

【POINT】改善の方向性

  • 階段導線に光で誘う演出を追加。
  • 店内にブランドモチーフ(羊・北海道)を象徴的に配置。
  • SNS写真で拡散される“記憶装置の設計”を意識する。

総括 ― 「安さ」ではなく「満足感」をデザインする

「63 ロクサン ジンギスカン」は、

空間・料理・価格・オペレーションのすべてがバランスしていた。

特別に豪華な素材や設備があるわけではない。

しかし、設計の精度と人の動き方によって、

「居心地の良さ」と「コスパの高さ」が共存している。

それは、“デザイン=装飾”ではなく、

“デザイン=運営と体験の構築”であることを示している。

【POINT】学びのまとめ

  • 地下立地は導線デザインで“期待”に変えられる。
  • 白と光の組み合わせで“清潔と余白”をつくる。
  • コース構成でUX(体験)を単純化する。
  • 厨房配置で少人数運営を支える。
  • SNSと口コミが第二の店舗デザインになる。
  • 記憶に残る要素を一つ加えることで再訪率を上げられる。

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