兵庫・元町 カウンターが舞台になる焼鳥屋「Hibi」設計と運営が結びつく瞬間【店舗デザイン研究】

はじめに:「おいしさ」の裏にある空間の力

神戸・元町にある焼鳥店「Hibi」。週末に家族との夕食で訪れたこの店は、ただ料理がおいしいだけではなく、その”おいしさ”をより強く感じさせるための設計や空間づくりがとても印象的でした。

訪問のきっかけは、食べログの高評価とクチコミ数。写真から伝わる洗練された雰囲気にも惹かれ、「これは間違いない」と事前予約して訪れました。

本記事では、「料理のおいしさとデザイン」「オペレーションと設計」「コストと設計」という3つの視点から、焼鳥店Hibiを設計者の目線で読み解いていきます。

焼鳥がおいしくなる空間とは?料理とデザインの幸福な関係

Hibiのおまかせコースは、最初に提供される鶏スープからすでに特別でした。優しい旨みがじんわりと体に染み渡り、期待がぐんと高まります。続いて登場したのは、白肝のお刺身。ごま油とお米の塩が使われており、まろやかな口当たりが印象的でした。

焼鳥は一本ずつ丁寧に提供され、どれも絶妙な焼き加減。表面は香ばしく、中はジューシー。炭の香りが口いっぱいに広がります。特に白レバーのムースを最中で包んだ一品は、見た目も楽しく、ワインとの相性も抜群でした。

このような料理をより一層魅力的に感じさせていたのが空間デザイン。店内は木を基調としたシンプルモダンなデザインで、オーク材の温かみと曲線的なカウンターが優しく包み込んでくれる印象。

焼き場はカウンターの中央に位置し、職人の所作が舞台のように見える構成。視覚、嗅覚、聴覚、そして味覚と、五感すべてで料理を体感できる設計でした。

設計者目線のポイント:

  • 焼き場を中央に配置することでライブ感を演出
  • カウンターの曲線が柔らかな雰囲気を醸成
  • 木と間接照明によるあたたかみのある内装が料理と調和
  • 客の視線を計算した配置で五感に訴える体験設計

少人数オペレーションを可能にする設計戦略

訪れた当日はスタッフが4名。焼き場1名、調理1名、ホール2名という構成で、24席を十分に回していました。カウンター越しにすべての動きが見えるため、スタッフの連携や無駄のない動線がよくわかります。

厨房はI型レイアウト。カウンターを囲むように配置された焼き場と、その背面に整然と並ぶ調理器具。調理や盛り付け、ドリンクサービスまで、必要な動きが最小限の動線で完結していました。

料理提供のタイミングも抜群。コースの流れを壊さず、焼きたてを最良のタイミングで提供してくれるのは、厨房内の動きと設計が一致しているからこそだと感じました。

また、ホールスタッフは静かに、しかし確実に客の動きを把握し、料理を出すタイミングやドリンクの注文をさりげなく拾っていきます。決して声を張らない接客は、空間の雰囲気と合致していて、心地よい距離感を感じました。

設計者目線のポイント:

  • オープンキッチンと客席が一体化した効率的な空間構成
  • スタッフの動線を最短距離に抑えるI型厨房
  • 焼き場を中央に据えることでオペレーションと演出を両立
  • コース料理のテンポを考慮した座席レイアウトと提供導線

コストに見合う空間価値とは?価格と満足度を設計から考える

私たちの会計は2人で19,160円。一人あたり9,580円と、サイト記載通りの価格帯でした。これが「高い」と感じるか、「満足」と感じるかは体験の質に左右されますが、Hibiでは完全に後者でした。

たとえば、焼き場をわずかに照らす照明は料理を美しく見せるだけでなく、職人の手元にも自然なスポットライトを与えていました。これは店舗設計における「演出」の成功例だと感じます。

また、ワインセラーが店内から見えるように配置されており、「ワインにこだわっている」というブランディングが空間から伝わってきます。実際、焼鳥に合わせたセレクトは素晴らしく、ワインを飲みながら焼鳥を楽しむという新しい提案になっていました。

さらに注目すべきは、空間設計が運営コストにも影響しているという点。4人で回せるレイアウト、目が届く客席構成、効率的な提供導線。すべてが「無駄なく、質高く、収益を最大化する設計」になっているのです。

設計者目線のポイント:

  • 焼き場照明と演出のバランスで特別感を演出
  • ワインセラーの配置が“こだわり”を視覚で伝えるブランディング
  • 空間設計が少人数オペレーションを支え、結果的に利益率を向上
  • 高単価でも「また来たい」と思わせる体験設計

総評:「Hibi」に見る飲食店設計のヒント

Hibiは、料理・空間・サービスのすべてが調和している店舗でした。とくに、焼き場を舞台として扱う空間設計や、五感に訴える演出、少人数オペレーションを成立させる動線設計は、飲食店を開業しようとするオーナーや設計者にとって非常に学びが多いと感じました。

さらに、価格設定と満足度のバランスを空間の設計によって実現している点は、経営視点から見ても非常に秀逸です。

「また行きたい」と思える理由が、料理の味だけでなく、そこに流れる空気や、職人の動き、素材のあたたかさにもある──そう感じさせてくれるお店でした。

次回は、より多くのワインを試しながら、空間との相性をもっと掘り下げて楽しんでみたいと思います。

店舗情報

項目 内容
店名 Hibi
住所 兵庫県神戸市中央区北長狭通3-3-4 グランディアサンセット通り 6F
業態 焼鳥
客単価 8,000〜10,000
客席数 24席

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