【福岡・天神】立ち飲みを“デザイン”する──NEO MEGUSTA(ネオメグスタ)に学ぶ、若者に刺さる店舗デザイン

店舗情報

項目 内容
店名 NEO MEGUSTA IMAIZUMI 今泉店
住所 〒810-0042 福岡県福岡市中央区赤坂1丁目10−16 ソピア赤坂ビル 1F
業態 居酒屋(立ち飲み・日本酒と創作おでん)
客単価 ¥3,000~¥3,999
客席数 約40席(立ち飲み主体)

一杯の“おでん”が街を動かす──福岡・今泉に生まれた新しい立ち飲み文化

天神駅から歩いて5分ほど。

夜の今泉の通りに漂うだしの香り。

その先に暖簾の隙間から光がこぼれる「NEO MEGUSTA 」が見えてきます。

地元のバーで「最近、一番勢いがある立ち飲み屋ですよ」と薦められたのがきっかけでした。

立地は駅近、そして口コミでは「若者に人気」「おでんが美味しい」。

実際に訪れると、その理由がすぐにわかります。

外から見ると人影が動き、暖簾越しに聞こえる笑い声。

人の気配をうまく“隠して見せる”演出。

足を踏み入れた瞬間、杉の無垢カウンターと香ばしい出汁の香りが迎えてくれました。

カジュアルさと本物感のバランス、

これが福岡の“今”の立ち飲み文化を象徴していると感じました。

ポイントまとめ

  • 駅近 × 暖簾 × 香り = 入りたくなる導線デザイン
  • 人の気配を“隠して見せる”暖簾演出
  • 本物志向とカジュアルさを両立する空気づくり

オープンキッチンの設計が生む「流れるリズム」

NEO MEGUSTAの店内は、設計的に非常に合理的。

中央のオープンキッチンを軸に、浅い奥行きのテーブルが連続して並ぶ構成です。

このテーブルの奥行きはおそらく300〜450mmほど。

お皿を一枚置けるギリギリのサイズで、

お客同士の距離が近くなり、自然と会話が生まれる。

対面というより“横並びで共有する空間”。

一人でも、二人でも、どちらでも居心地の良いバランスが保たれています。

厨房ではスタッフが5名ほど。

それぞれが最小限の動線で動けるように設計されており、

注文、調理、提供までのテンポが驚くほどスムーズ。

立ち飲みという限られたスペースでも、

設計とオペレーションが融合すると「快適な混雑」が生まれることを実感しました。

ポイントまとめ

  • 奥行き300〜450mmのテーブル設計が“会話と回転”を両立
  • オープンキッチン中心の動線でスタッフが効率的に連携
  • 狭小空間でも“流れるリズム”を生むプランニング

「明るい立ち飲み」という選択──光で作る清潔感と開放感

多くの立ち飲み店は“やや暗め”な照度で雰囲気を出すことが多いですが、

NEO MEGUSTAはその逆。明るい照明計画が印象的でした。

広角のスポットライトを使用し、壁面にも光を回しているため、

店全体が広く感じられる。

これは、照度を上げるだけでなく、壁面照度を意識的に設計している証拠です。

結果として、立ち飲み特有の「圧迫感」がなく、

初めて訪れる人でも安心して過ごせる空気を作り出しています。

明るい空間は、清潔感や安全感を演出するだけでなく、

“女性客が入りやすい立ち飲み”という新しい市場を切り開いているとも言えます。

ポイントまとめ

  • 広角照明+壁面照度で“明るく広い印象”を演出
  • 清潔感と安心感を与える照明設計
  • 女性も入りやすい「光のデザイン」

“手の届く上質”──素材とレイアウトの関係

空間の印象を支えているのは、素材の選び方

コンクリート打ちっぱなしの壁に、光沢を帯びた無垢の角材テーブル。

おそらく杉材にクリア系のウレタン塗装をかけており、

経年変化を楽しめる質感が残されています。

この組み合わせは、コストを抑えながら“本物感”を演出する上で非常に秀逸です。

無垢材を空間の要所だけに使用することで、

全体の統一感を保ちつつ、メンテナンス性も確保。

「見えるところにお金をかけ、見えないところを削る」

——設計コストの使い方として理想的です。

照明の明るさと木の温かみが重なり、

冷たい素材でも柔らかく感じるバランス。

これは“素材と光の対話”が意識された空間づくりでした。

ポイントまとめ

  • 無垢材+コンクリート=「本物感 × カジュアル」
  • 効かせ材でコストを抑えながら印象を強調
  • 明るい照明が木の質感を引き立てる

入口の仕掛け──「見せる日本酒ショーケース」のデザイン

NEO MEGUSTAの入り口を入ってすぐ左手に、

ひと際目を引く日本酒ショーケースがあります。

この位置設計が絶妙。

来店客が暖簾をくぐって最初に視線を向ける方向にショーケースを配置することで、

「日本酒が主役」というメッセージを自然に伝えています。

また、このケースは単なる保冷機器ではなく、

空間演出の一部として“見せる什器”に仕上げている

清潔で明るい照明に照らされたボトルが、

ガラス越しに並ぶ姿はまるで展示のよう。

お客が自分で選ぶ楽しさを感じられる仕掛けです。

この“入口演出”は、初回体験の印象設計として非常に効果的。

「今日はどれを飲もうか?」という行動を自然に促し、

滞在体験の第一印象を決定づけています。

ポイントまとめ

  • 入り口左手の配置で来客の視線を誘導
  • “冷蔵庫”ではなく“展示物”としてのデザイン
  • 初回体験を演出するショーケース配置

若者×一人客が混ざる「多層ターゲット空間」

訪問したのは19時ごろ。

店内は若いカップル、20代の女性グループ、そして一人で日本酒を楽しむ男性。

年齢層は幅広く、それぞれが思い思いに立ち飲みを楽しんでいました。

ここで感じたのは、「居場所の多様性」をデザインしているということ。

立ち飲みという形式は本来、短時間・回転型のビジネスモデルですが、

この店は「滞在を楽しむ空気」を持っている。

その理由は、奥行きの浅いテーブルと照明バランスにあります。

お客同士が適度に距離を保ちつつも、会話がしやすい。

一人でも疎外感がない。

空間設計が“人間関係の密度”をコントロールしているのです。

ポイントまとめ

  • 若者~中年まで混ざる“多層ターゲット”
  • 奥行き設計と照明が“心理的距離”を最適化
  • 一人でも複数人でも居心地の良い空間設計

スタッフがつくる「空間のリズム」

立ち飲み店において最も印象に残るのは、人の動きの美しさです。

NEO MEGUSTAのスタッフは、全員がリズムよく動き、声をかけ合っていました。

「お疲れさまでした!」

「これ、今日おすすめですよ!」

厨房からホールまで、自然なテンポで会話が流れる。

その声や動きが、まるで空間全体のBGMのように感じられる瞬間がありました。

これを設計的に見ると、“音と視線の通り”を意識して壁を抜いていると考えられます。

音が届きすぎず、しかし気配が伝わる。

空間設計とスタッフ教育が一体となって作る“空気感の共有”が、この店の最大の魅力です。

ポイントまとめ

  • 声と動きが空間の「リズム」を形成
  • 視線と音の抜けを設計段階から想定
  • “人がデザインの一部になる”店舗体験

「安くて美味い」を支える設計とオペレーション

2人で6,500円。

一人あたり3,250円という価格で、この満足度は驚異的。

NEO MEGUSTAがそれを実現できるのは、

設計段階からビジネスモデルを意識しているからだと感じます。

  • 立ち飲み=回転率が高く、客単価を下げても利益が出る
  • 小皿料理=仕込み効率が良く、食材ロスが少ない
  • オープンキッチン=スタッフ間の移動を最小化

この3つの組み合わせが、“設計と経営の接点”を体現しています。

店内を見ても、無駄な装飾はなく、素材と照明で世界観を作っている。

必要な要素だけを残す“削ぎ落としの美学”が、結果的にコストパフォーマンスを高めています。

ポイントまとめ

  • 設計段階で収益構造をデザインしている
  • 回転率・仕込み効率・動線短縮の三拍子
  • 装飾を削ぎ、素材で世界観を表現するミニマル設計

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