東京・西日暮里の住宅街に灯る、あたたかい“ちょうど良さ”【店舗デザイン研究】

なぜ、この店に行ってみようと思ったか?

―自分が手がけた空間に、時を経て“お客さんとして”入ってみるということ―

この「和酒・煮込みらいどん」は、私が設計を担当した飲食店のひとつです。オープンから1年以上が経ち、現場のリアルな声や空間の“育ち方”を確認したくなり、打ち合わせ帰りにふらっと立ち寄ることにしました。

電話をかけると、今夜も賑わっている様子。“お店が育ってる”そんな手応えを確かめるのが、設計者として一番うれしい瞬間です。

🔍ポイントまとめ

  • 設計後の「育ち方」を観察できる貴重な訪問
  • 売上や客入りを設計者目線でチェック
  • 時間をおいて訪れることで、空間の変化を感じ取れる

店前に立ったとき、心が動く“灯り”

―東京・西日暮里の住宅街に浮かび上がる、灯りと人の気配―

谷中という土地柄、店に向かう途中は静かな住宅街。そこにぽつんと浮かぶ店の灯り。中からは笑い声が聞こえてきて、自然と足取りが軽くなります。

この賑わいは偶然じゃない」そう思わせる“気配”が、外からも伝わってくるのです。

🔍ポイントまとめ

  • 駅からの導線に緩急があることで期待感が高まる
  • 住宅街における「灯り」の演出はとても効果的
  • 外観で賑わいを伝える工夫は集客にもつながる

扉を開けて、空気が変わる

―満席の熱量。空間が人の温度で満たされている―

引き戸を開けると、音と匂いと人の熱気がふわっと包んでくる。設計者として何度も足を運んだ空間だけれど、満席のお客さんがいると、まるで別の顔に見える。

「よかったなぁ」この瞬間、心の底からそう思いました。

🔍ポイントまとめ

  • お客さんの入り方で空間の答え合わせができる
  • 満席時の音や匂いも設計要素として捉える
  • 人が入って初めて完成する空間がある

限られた予算でも、素材と光でここまでできる

―“素材の表情”を引き出すことがデザイン力の見せ所―

木毛セメント板や合板など、比較的コストを抑えた素材を使用しつつ、照明との組み合わせで空間に奥行きと表情を与えました。光が当たったときに生まれる陰影が、素材の持つ“温度感”を引き出してくれます。

コストをかけずに、心地よい空間をつくる。それが、この店舗の設計で特に意識したポイントです。

🔍ポイントまとめ

  • 安価な素材でも、配置と照明で魅せることができる
  • 光と影の使い方で空間の印象は大きく変わる
  • “素材の表情”を引き出すことで、空間に深みが出る

プランの意図と現場の実際

―I型カウンターとテーブル席のバランス設計―

この店舗は、I型カウンターを中心に据えた設計。厨房との距離が近く、調理のライブ感がダイレクトに伝わるようになっています。料理の音や香りが空間に臨場感を与えています。

奥にはテーブル席を2つ用意し、8名程度の団体にも対応可能。回転率と収益性の両立を図ったプランです。

🔍ポイントまとめ

  • カウンターで臨場感と親密さを演出
  • 奥のテーブル席で団体対応の幅を確保
  • 小さな空間でも、ゾーニングで多様な客層に対応

地元に根ざす“育つ店”

―お客さんが空間を育てる。その様子を目の当たりにして―

来店客の多くが常連。スタッフとのやりとりも親密で、まるで“第二の家”のような空間になっていました。地域に愛され、自然と人が集まる場所に成長しているのを見て、設計者として心からうれしかったです。

🔍ポイントまとめ

  • 常連が自然と集まる空間は、居心地の良さの証拠
  • 地域とのつながりが、店の寿命を延ばす
  • 空間は“人”によって育てられる

客入りと回転率のリアル

―満席×適度な回転=理想的なオペレーション―

ほぼ満席の状態が続いていて、予約も多く入っているとのこと。滞在時間がちょうどよく、お客さんが心地よく過ごせる“ちょうど良いサイクル”が生まれていました。

空間設計とオペレーションのバランスが取れている証拠だと思います。

🔍ポイントまとめ

  • 滞在時間を意識した設計が回転率に影響
  • 席配置や動線がスムーズな回転を生む
  • 空間が“流れる”ように動く店は強い

メニュー構成と料理の印象

―王道の居酒屋に、ひとさじの個性を添えて―

メニューは和食中心。煮込みや焼き物などの王道の品に加えて、素材にこだわった肉料理や創作メニューもちらほら。

どれも盛り付けに美意識があり、「見た目でも楽しめる」料理たちでした。食器も空間に合わせたセレクトで、料理がより引き立って見えました。

🔍ポイントまとめ

  • 王道メニュー+オリジナルで飽きさせない
  • 盛り付けと器選びは空間全体の一部
  • 味だけでなく、視覚でも満足感を演出

ドリンクと客層のバランス

―日本酒を軸に、誰でも楽しめるドリンク構成―

日本酒のセレクトが充実していましたが、ワインや焼酎も揃っており、お酒好きでなくても楽しめるラインナップ。

飲み物の幅が広いと、客層の幅も広がる。そんな工夫を感じました。

🔍ポイントまとめ

  • コンセプトの軸を持ちつつ、多様なニーズに応える
  • ドリンクの幅が、利用シーンを広げる
  • メニュー構成で“誰を呼ぶか”が変わる

スタッフと厨房オペレーション

―少人数でもスムーズ。見えない工夫が現場に効く―

2〜3名のスタッフでお店を回していましたが、動きに無駄がなく、それぞれの役割分担がはっきりしていました。

厨房はI型のシンプルな構成。以前から「使いやすい」と評価をいただいていて、こうして現場でその効果を目の当たりにできたことがうれしかったです。

🔍ポイントまとめ

  • 少人数で回せる設計は、飲食店経営の鍵
  • 厨房の配置は動線と効率に直結
  • 設計とオペレーションが噛み合うと、現場は強い

コスパと満足感

―価格以上の価値を感じさせる空間体験―

二人で15,000円。かなり頼んだので一般的には一人5,000〜6,000円台でしょう。それでもこの満足感は高かったです。

料理、接客、空間のトータルで「また来たい」と思える。価格以上の価値がある店とは、こういう店のことだと思います。

🔍ポイントまとめ

  • コスパは料理だけでなく、空間全体で決まる
  • “また来たい”と思わせる設計は何より強い
  • 空間×料理×人=満足感

最後に:東京・西日暮里で、空間が“生きている”と感じた夜

設計者として関わったこのお店。時を経て訪れ、お客さんとして体験してみると、「空間が生きている」ことを改めて実感しました。

東京・西日暮里という落ち着いた街に、灯りと人の声が響く店。ここには、“飲食店のあるべき姿”が詰まっていると感じました。

開業を考えている方には、ぜひ参考にしてほしい。素材選び、動線、回転率、接客、そしてなにより“人の居場所”を考えること。その全てが空間を育て、店を続けさせてくれるのだと、改めて気づかせてもらいました。

店舗概要

項目 内容
店名 和酒・煮込みらいどん
住所 東京都台東区谷中3-24-7
業態 居酒屋
客単価 ¥6,000~¥7,999
客席数 18席

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