事業計画書の全体予算を作るために、重要なポイントは、店舗内装工事のコストです。なぜなら、自分たちでは出せず、内装業者に頼まないとわからないからです。
そこでの不安要素は、内装工事見積りがなかなか出なく、想像を超えた金額が出ることで、スケジュールが遅れてしまうことです。そうならないために考える大切なポイントは
①コストの把握
②スケジュールの把握
③専門家との繋がり
その上で、実現する方法として4つあります。
①物件探しと同時、もしくは見つかる前に内装業者は見つけておく
②見積り依頼をすぐにする
③やるべきことリスト作成
④スケジュール表を作成
上記のポイント、手法を活用することで、筆者が実際に作った店舗では、スムーズな店舗づくりが可能になっています。重要なポイントとして、ぜひ覚えておきましょう。
内装工事コストが想像できない?!
内装工事を依頼することなんて、一般人からしたら経験がほとんどない人が多いです。家づくりであれば一生に一回で、多い人でも3回くらいでしょうか?店舗内装であれば、お店が増えればその分作ってはいくか盛りれませんが、個人店であれば3店舗くらいでしょうか。多くても10店舗ほど。なので、いまいち一般的にいくらなのか?というのが想像ができません。テレビやパソコン、車などは、金額を目にすることは多いので、コスト感覚は想像できますよね?それとは圧倒的にコストに対する情報が少なすぎるのです。
店舗内装コストって高いの?
店舗内装が高いのか?安いのか?というのは、基準があって初めて高い安いが言えるはずです。ところが、自分の資金によって高い安いという人がいますが、それは完全に間違っています。その時代、その場所で、そのような空間を作るのであれば、相場はこの金額!といった感じで金額が高い!安い!という判断が初めてできるわけです。
店舗作りのコスト割合
店舗出店する時に気になるのがコストです。お店作りをするためのコストの大きな項目としては、物件取得費、店舗内装費、運営費の3つになります。その中で自分自身で算出できる項目が、運営費です。
次に不動産サイトなどでネット検索すれば、物件取得費はすぐにわかります。
内装費用はコスト比重が高い
しかし、店舗内装費だけが、内装業者に依頼をしないとわかりません。店舗内装費は全体的なコスト比重が高いです。設計を進めないと、内装見積が出てきません。ここが不安要素なのです。
概算見積を出す時間もコストにつながる
内装見積の問題は、スケジュールがかかることです。内装工事費の概算見積を出すために2週間以上はかかります。それはなぜでしょうか?
概算見積は時間がかかるのはなぜ?
ラフプランを作って、仕様を仮確定してから見積りを作るからです。プランは店舗作りの基本となるので、客席も厨房機器も仮に確定させます。クライアントも意見を言いたくなります。しかし、そのやりとりをしていたら、2週間では到底終わりません。同じく空間のデザインイメージに影響を与える内装仕上げも仮決定しなければ、概算見積も出せません。ある程度、今までの実績を元に金額を出していきます。
金額はあくまで目安に
20%程度の誤差は、当然出てくることは想定しておきましょう。それは高くなる方に。なので例えば、1000万円の概算見積であれば、1200万かかるとして事業計画をしておくのが良いでしょう。なぜ、高い方に見積もりを見ておくのかというと、クライアント自身の意見が入っていないため、設計者は費用対効果のあるデザインをしていくからです。そこに他の意見が入ってくると、基本的にはコストが上がることになります。もう一つは、コストは下がる方は調整が楽ですが、コストアップすると、調整が大変です。例えば、他の項目を減額したり、融資などの資金をあげたりしなくてはいけなくなるからです。
物件契約と内装コストの時間軸がづれやすので注意!
物件も仮決定しないとプランはできません。インテリアデザイン事務所や設計事務所、内装業者に提案をしてもらうために「どの物件でやるのか?」を決めなければ、プラン作成はできません。
ただ、物件の申し込みをしなければ、他のテナントオーナーに物件契約をされてしまいます。人気物件であればあるほど、とても判断が早くないといけません。都内の人気立地でしたら2~3日で決まることも多いので、少なくとも1週間以内に状況判断をして、仮申し込みを入れることになります。そうなると、申し込んでから内装の概算見積が出てくるまでの時間軸が、異なります。
さらに、物件の本契約をするまでも不動産屋からすれば急ぎたいので(家賃発生は早くしたいので)、数週間後に物件の最終決断が迫ってきます。そこか内装業者を探すのでは到底間に合いません。なので、事前に内装業者との面談やコスト感を聞いておく必要があるわけです。
融資を受けるのであればスケジュールはズルズルに、、、
内装工事費が出なければ、事業計画も完成できません。融資を受ける場合は、スケジュールが伸びていくわけです。なので、一番時間がかかる内装費用を出すための行動を一早く手をつける必要があるわけです。
リアルな内装工事費っていくらなの?
ネットや本にある内装の坪単価って意味ない?
本に載っているのは、何年前の情報でしょうか?かなり古いわけです。ネット検索で調べても、内装金額についてあまり書かれているものが少ないです。それでも飲食店のスケルトンなら30~80万円/坪とか書いてありましたが、都内で10~30坪くらいの小さな飲食店で、50万円/坪以下で内装工事するのはかなり厳しいはずです。2024年現在、スケルトンで重飲食であれば、坪80万円くらいの予算を確保しておく方が確実です。
建築工事費の上昇が止まらない!
コロナ後、建材の価格上昇、慢性的な人手不足による人件費上昇によって、一気に価格上昇をし始めています。各メーカーも価格改定を毎年おこなっている状況です。職人不足もあって、人件費がどんどん高騰しています。これはしばらく社会的な解決が出来るまで、ずっと続くことでしょう。
実際に工事をしていないブログは参考にならない
コンサルタント会社が運営するサイトは、実際に内装工事をしているわけではないので、内装業界のリアルな情報というより、内装業者から出てきている見積をベースにしているはずです。それにしても、作り手側ではないので、コストが上がってもリスクを負わないので、仕事を取るためにも安めに設定しているはずです。
この記事を書いている私たち(飲食店デザイン研究所、他関連企業)も、飲食店やホテル、住宅の依頼が多いため、信頼度の高い情報は、この3つのジャンルになるわけです。アパレルやオフィス、医療などの内装コストについては、実績としてのサンプル数が少ないため、発言を控えた方が良いと判断しています。
内装工事コストは何によって変わるのか?
内装工事コストに影響を与えている要素を知ることで、感覚的に高くなりそうか?安くなりそうか?を判断できるようになります。
物件状況による価格差
内装工事の金額は、物件の大きさと物件状況によって大きく変わってきます。特に大きいのが設備インフラ関係が大きく影響を与えます。
物件の大きさ
物件の大きさが大きければ、もちろん高くなりますが、私たちのデータでは、17坪以上になると通常の坪単価になっていき、17坪以下であると坪単価が急上昇していく傾向があります。それはインフラ工事が多い厨房周りの大きさは小さくても比例して小さくなることはないからです。
ダクト工事
特に飲食店で大きいのは、ダクト工事です。屋上までダクトを持っていくには、足場も必要になりますし、ビルの高さが高ければ高いほど、ファンの容量も大きいのが必要になります。
また、躯体にダクト用の開口がなければ、新規で開口しなくてはいけません。その際に建物の躯体が鉄筋コンクリート造の場合、構造体に開けることは困難なので、そもそも飲食店ができなかったりします。コストだけの話に収まらなくなってくるので、十分に注意が必要です。
電気工事
電気容量が足りなければ、幹線(元の引き込み線)から引き直しになります。分電盤も必要かどうかもあります。
給排水工事
給水管の口径が細ければ、太く配管をし直すために、地面を掘り起こしたり、それが困難であれば給水タンクなどを設置しなくてはいけません。排水管の場合、地中で詰まっていれば、使えないこともあります。建物が古ければ古いほど、そのリスクが上がります。
ガス工事
厨房機器や給湯器の必要なガス容量によって、ガスメーターの交換が必要になります。元の引き込みのガス管の口径が細ければ、道路からの引き込み直しにもなります。
空調工事
室外機置き場が、屋上や設置しにくい状況の場合は、その分コストが上がります。
このように設備インフラが、その物件にどのくらいのスペックで入っているかによって、内装工事の費用は大幅に変わることがわかります。
ファサードの有無
ファサードにサッシや壁があれば、コストはあまりかかりませんが、シャッターだけで何もない場合もあります。そうなればもちろん、ファサードを作るためのコストがかかってきます。
立地による価格差
意外とかかる駐車代
都内の駐車場代は、かなり高いです。地方ではタダで、車が置けますが、都内は基本駐車場です。そこに数十人の職人が、毎日やってきたら、相当な駐車場代になるのは想像つきますよね?
都内より地方の方が高いの?!
工事価格は、職人単価と材料単価で大体決まります。その職人単価が一番高いのは、地方の開発が集中しているところです。開発も何もされてない地方は、価格は下がりますが、そうでないところは、東京より高いのです。それはもともと地方には、職人が少ないのに、工事が多いから高くなるわけです。
材料単価も実は東京が安いのです。それは流通が良いからです。地方は東京に集まっているものを、運ぶことが多いからです。さらに離島になると、陸続きではないので、船便代もかかります。
業態による価格差
ここでは、業態による価格差を確認していきます。3つの視点があります。
一つ目が、前段でも話した通り、設備インフラが多いとコストが上がります。
二つ目が、造作の数です。造作とは、細かい木の造り込みや、金属什器の造り込みが多ければ多いほど、コストは上がります。
三つ目が、価格に影響を与えるのは発注件数です。業態全体の発注件数が多ければ、その分なれていますので、安くなりやすいです。経験値が少なければ、高くなります。
そういう視点で考えると、私たちが得意なものは以下の三つの業態が得意なので、その分コスパが良くなります。
- 飲食店
- ホテル
- 住宅
デザインによる価格差
- 施工難易度の高い設計
- 詳細設計(ディテール)のこだわり
- 高価なマテリアル
- デザインを優先した設備設計
すぐに概算コストを知りたい!参考価格は必要!
- 坪いくら?って意味はあまりないが、大体のイメージはつく。軽飲食であれば70万円、重飲食であれば80万円でまずして計算おきましょう。
- その計算はあくまでスケルトンの時のみ有効であること。
- 居抜きは物件見ないと内装コストは出ない
最後に言いたいことのまとめ
店舗内装コストは事業計画の成功に直結する重要な要素です。予算オーバーやスケジュール遅延を避けるために、事前準備として相場の把握、信頼できる内装業者の早期選定、そしてスケジュール管理を徹底しましょう。これにより、無理のない計画でスムーズな店舗開業が可能となります。
内装工事は見積もりの遅れや予算超過が起きやすいため、計画段階からコストとスケジュールをしっかり管理することが肝心です。