飲食店舗設計におけるHASAPPとバリアフリー法

食品衛生法の概要(飲食店営業)

  1. 営業許可の必要性
    • 飲食店を営業するには、営業所を所管する都道府県の保健所に「営業許可申請」を行う必要があります。
    • 許可を受けずに営業した場合は違法となり、罰則が科される可能性があります。
  2. 法的根拠
    • 食品衛生法および 食品衛生法施行規則 に基づいて規定。
    • 特に施行規則の別表17・18に、設備や衛生管理の「最低基準」が示されています。
  3. 条例による上乗せ規制
    • 実際の許可条件は、各都道府県や政令市の食品衛生条例で詳細に定められています。
    • 例:
      • シンクの数(1槽・2槽・3槽の要件)
      • シンクの大きさ
      • 冷蔵庫・冷凍庫の容量
      • 手洗い場の設置数・位置
      • 換気・照明・床・壁材の仕様
  4. 設計段階での対応
    • 「最低基準」だけでなく、条例で求められる数値基準に適合させる必要がある。
    • そのため 設計段階から所轄の保健所に事前相談し、
      • 設計図面を提示して
      • 事前確認を受けるのが一般的。
  5. 実務上の流れ(概要)
    1. 設計段階で保健所に事前相談
    2. 設備基準の確認(条例の適合チェック)
    3. 工事後に現地確認(立ち会い検査)
    4. 問題がなければ営業許可証が交付され営業開始

つまり、食品衛生法は「全国統一の最低基準」を定めているにすぎず、実際の営業許可取得のためには 地域ごとの条例基準を満たすことが必須です。したがって、設計時点から保健所との調整を行うという流れのご説明は正確です。

現場的には「条例準拠+事前相談」が肝になる、という点まで書かれていれば実務的にも十分正しい説明になっています。

 衛生管理チェック項目としての過不足

結論から申しますと、ご提示の内容でほぼ十分です。

ただし実務上は以下の点も「設計段階で押さえておくべき事項」として追加を検討いただくと安心です:

  • 動線計画の明確化:生食と加熱調理済食品、洗浄後食器と未洗浄食器の動線を交差させないこと。
  • シンク数と区分:条例によっては「原材料洗い用」「食器洗浄用」「手洗い専用」を分離することが必須。
  • 換気・排煙:厨房の排気量(3,000m³/h など)を確保、調理熱気がホールに流れ込まない構造。
  • 食器棚・収納:調理後の器具や食器は「床から60cm以上」の高さに設置された棚に保管。
  • 害虫防止措置:ドアはクローザー付、出入口にエアカーテンや網戸、排水溝にトラップを設置。
  • トイレ動線:トイレと厨房は直結不可。必ず廊下や前室を挟む。

設計計画に落とし込む場合のイメージ

以下は飲食店の厨房・ホールを計画する際の典型的な落とし込みです。

厨房の区画方法(最重要)

  • 厨房は「汚染区域」と「清潔区域」を区分する考え方で計画。
    • 汚染区域:食材搬入、下処理、野菜洗浄、魚のウロコ取りなど
    • 清潔区域:加熱調理、盛付け、完成料理の一時保管
  • 汚染区域と清潔区域の間に手洗い器と仕切壁を設け、交差汚染を防ぐ。
  • 区画例:
    • 入口側(汚染作業ゾーン):食材搬入口 → 原材料シンク → 下処理台
    • 中央(調理ゾーン):ガスレンジ、フライヤー、オーブン
    • 出口側(清潔ゾーン):盛付台、パス(提供口)
  • 洗浄コーナー(食器洗浄機・2〜3槽シンク)は提供口とは逆側の壁面に配置し、食器の汚染動線を分離。

厨房機器の配置

  • シンク:条例により「2槽以上」が原則。野菜専用・肉魚専用・食器洗浄専用を分けることが望ましい。
  • 手洗い器
    • 各調理作業場ごとに1台以上(センサー式かレバー式)。
    • 石鹸・ペーパータオルを設置。
    • 入口、洗浄機近く、調理台近くなど複数配置が推奨。
  • 冷蔵庫・冷凍庫:食材別に区分(生肉・魚介・野菜・調理済)。容量は保健所が求める基準あり。
  • 食器棚・保管庫:必ず床から60cm以上。扉付き(ホコリ侵入防止)。
  • 排水溝:厨房内はグレーチング付き側溝とし、勾配を設けて常に排水。

客席ホールとの関係

  • 厨房とホールの間はパスカウンター(提供口)を設け、清潔側から料理を出す動線を確保。
  • ドリンクカウンターは厨房内とは別区画に設置する場合が多い(ただし共通シンクの扱いは条例で確認要)。

トイレ・共用部

  • 厨房に直結せず、必ず廊下や前室を介する。
  • 手洗い器はトイレ内+トイレ外の両方に設置するのが望ましい。

まとめ(設計者チェックリスト風)

  • 厨房を「汚染区域」「清潔区域」で区画したか
  • 調理動線と洗浄動線が交差していないか
  • シンクは用途別に2〜3槽設置しているか
  • 手洗い器を作業ゾーンごとに配置しているか(センサー式/レバー式)
  • 食器棚は床から60cm以上・扉付きで設置しているか
  • 排水溝はトラップ付きで清掃可能か
  • 冷蔵庫は容量・食材別区分が確保されているか
  • 厨房とホールの仕切り(パスカウンターなど)で交差汚染を防いでいるか
  • トイレは厨房に直結していないか

ご提示の項目を設計に落とし込むと、最終的には「ゾーニング(区画計画)」と「動線計画」が中心課題になります。

つまり「衛生的な動線をいかに確保するか」が設計のポイントです。

HACCP(ハサップ)の概要(2021年6月~義務化)

  1. 制度の背景
    • 2021年6月から、食品衛生法の改正により、原則すべての食品等事業者に HACCPに沿った衛生管理 が義務化されました。
    • 従来の「一律的な規制」から、リスクに応じた自主的な管理へとシフト。
  2. HACCPとは
    • Hazard Analysis and Critical Control Point(危害要因分析重要管理点)の略。
    • 食中毒菌の汚染や異物混入など、食品事故の危害要因を 原材料の受入れから提供までの全工程で分析。
    • その上で、特にリスクが高い「重要管理点(CCP)」を特定し、モニタリング・記録・是正措置を行う仕組み。
  3. 実施の流れ(概要)
    1. 危害要因の分析(何がリスクになるか)
    2. 重要管理点(CCP)の設定(どこを重点的に監視するか)
    3. 管理基準の設定(温度、時間など)
    4. モニタリング方法の設定(どうチェックするか)
    5. 是正措置(基準外の時にどう対応するか)
    6. 検証方法の設定(管理が有効か確認する)
    7. 記録・保存(実施内容を文書化して残す)
  4. 事業者規模に応じた対応
    • 大規模事業者:国際的HACCP基準に沿った「基準B」対応。
    • 中小規模事業者(飲食店など):HACCPの考え方を取り入れた「基準A(簡略版)」対応。
    • 飲食店の場合は、日常的な「衛生管理チェックリスト」「温度記録表」などで実務的に対応可能。

まとめ

  • ご提示の「リスクの洗い出し」と「重要な管理点のモニタリングを行う仕組み」という説明は正しいです。
  • 追加すると、「2021年6月から義務化」「大規模事業者と中小規模事業者で対応レベルが異なる」この2点を加えると、より実務に即した概要説明になります。

実務的には 「大規模事業者(HACCP基準B)」と「小規模事業者(HACCP基準A・簡略化)」の違いがあり、飲食店は後者が多いため、記録や検証が簡略化される点も併せて押さえておけば完璧です。

HACCPチェック項目(整理)

  1. 危害要因の分析
  2. 重要管理点の決定
  3. 管理基準の設定
  4. モニタリング方法の設定
  5. 改善措置の設定
  6. 検証方法の設定
  7. 記録の作成・保存
  8. 小規模事業者に対する簡略化規定

この枠組みをベースに、店舗の設計計画に落とし込むとどうなるかを解説いたします。

HACCPを反映した設計計画(飲食店の例)

危害要因の分析 

ゾーニングと区画計画

  • 食材の「受入・下処理 → 調理 → 盛付・提供 → 洗浄・廃棄」の流れを区画で分ける。
  • 生食材の下処理ゾーン調理済食品の盛付ゾーンを分離。
  • 動線が交差しないように設計(バックヤードからの搬入ルートとホールへの提供ルートを別にする)。

重要管理点の決定

設備配置

  • 冷蔵庫・冷凍庫:温度管理が重要管理点。
    • 原材料別に庫内を区分(肉・魚・野菜・調理済)
    • ガラス窓付冷蔵庫や温度記録計を備えることも。
  • 加熱調理機器:中心温度を測定できるよう作業台近くに温度計を常設。
  • 手洗い器:交差汚染防止の重要管理点。厨房内に複数配置(調理場・洗浄場・入口)。

管理基準の設定

厨房機器と計測器

  • 冷蔵庫は 10℃以下、冷凍庫は -15℃以下など基準を満たす容量・性能のものを導入。
  • 調理台付近に 中心温度計 を設置し、加熱基準(75℃1分以上など)を確認できるようにする。
  • 換気量を基準にした排気設備(排気口・フード)を設計に組み込む。

モニタリング方法

記録しやすい動線と器具

  • 冷蔵庫・冷凍庫は温度計を外部から読める位置に。
  • 盛付けカウンターには記録用のタブレットや記録表を置くスペースを設ける。
  • 手洗い器の近くに「手洗いチェック表」を掲示。

改善措置

代替設備の確保

  • 冷蔵庫が故障した際に一時保管できる「予備冷蔵庫」スペースを確保。
  • 廃棄品置場(床から60cm以上、扉付き)を設ける。

検証方法

点検ルートを考慮した設計

  • 日常点検(厨房巡回)を想定し、作業台や機器の裏側にも人が通れる幅を確保。
  • 検証作業のため、温度計・点検記録の掲示板スペースをバックヤードに設置。

記録の作成

書類やデジタル管理の配置

  • ホール側に近い事務カウンターに「HACCP記録保管棚」を設ける。
  • 厨房隅に記録用のホワイトボードやタブレット台を設けると効率的。

小規模店舗向け(簡略HACCP)

  • 「毎日のチェックリスト」で代替可能
    • 冷蔵庫温度記録欄
    • 手洗い確認欄
    • 清掃確認欄
  • 設計的には、厨房内の「壁面掲示スペース」「チェック表を置くカウンター」を設けると運用がスムーズ。

厨房レイアウト例(HACCP対応)

  • 入口付近:バックヤード搬入 → 原材料シンク
  • 中間ゾーン(調理区画):ガスレンジ、フライヤー、オーブン、加熱調理台
  • 清潔ゾーン:盛付台、パスカウンター(提供口)
  • 洗浄ゾーン:食器洗浄機、2〜3槽シンク、乾燥棚(床から60cm以上)
  • 手洗い器:入口・調理場・洗浄場の3か所に配置
  • 冷蔵庫:調理区画の近くとバックヤードに分けて設置、温度表示が確認しやすい位置

まとめ

  • ご提示の8項目は HACCP必須事項を完全に網羅しています。
  • 設計に落とし込むときは、
    • 「区画(汚染・清潔)」
    • 「機器(冷蔵庫・シンク・手洗い器)」
    • 「記録のしやすさ(温度計・掲示板・保管棚)」この3点がポイントです。

設計に落とし込むときの注意点まとめ

区画(汚染・清潔のゾーニング)

  • 動線の分離
    • 原材料搬入 → 下処理(汚染エリア) → 加熱・盛付(清潔エリア) → 提供口
      • ゾーニングと合わせて、導線設計を厨房内までも設計することで、配慮された空間になる。
    • 汚染エリアと清潔エリアが交差しないように配置。
      • 小さな店舗では現実的には厳しいが、フードの流れとドリンクの流れこの二つと、下げものの流れを書くことで、プラン上では分かれやすくなる。ディシャップされるまでの厨房導線が重要になる。
  • バックヤード動線
    • 食材搬入ルートとホール・客席動線を分ける。
      • 通常営業中に食材搬入とならないように仕込みを行うので、基本的には問題にはならない。
      • 忙しい時に急遽、倉庫から食材をとりに行く時に起こりうる
  • 洗浄区画の分離
    • 洗浄作業は提供口の近くに置かず、必ず汚染側の端に配置。
      • 洗い場の位置はいつも難しい。厨房と客席の出入り口の近くだと、すぐにシンクないに下げものが置けるので良い反面、ディシャップもそこに欲しい場所である場合が多い。出入り口を二つにして循環できるプランが一番良い。
      • 結果として、洗い場とフードやドリンクの出し口が分けられる
  • トイレ・休憩室との距離
    • 厨房に直結せず、必ず廊下や前室を介して設ける。
      • 休憩室は厨房から行くように計画することもあるが、スペースが確保できるなら、廊下などを介したほうがいい。

機器(冷蔵庫・シンク・手洗い器)

  • シンクの数と用途分け
    • 食器用、食材用(野菜・肉魚)、手洗い用を明確に分ける。
    • 各自治体条例で数・大きさが定められているので要確認。
  • 手洗い器の設置
    • 厨房入口、調理台付近、洗浄機付近など複数配置。
    • センサー式 or レバー式蛇口が必須。手を使わず操作ができるのが良いとのことで。
    • 石けん・ペーパータオル・消毒液を常備。
  • 冷蔵庫・冷凍庫
    • 食材ごとに区分け(生肉・魚・野菜・調理済み)。
    • 温度計を外から確認できる位置に設置。冷凍冷蔵庫についている。
  • 食器棚・保管庫
    • 扉付きで、床から60cm以上の高さに設置。
    • 使用済食器と清潔食器を交差させない動線を確保。
  • 排水・換気
    • 床勾配をとり、グレーチング側溝で排水を集約。
    • 換気はホールへの逆流を防ぎ、フード容量は機器仕様に対応させる。

記録のしやすさ(温度計・掲示板・保管棚)

  • 温度管理
    • 冷蔵庫・冷凍庫にデジタル温度計を設置。
    • 盛付カウンターや調理台に中心温度計を常備。
  • 掲示・記録
    • 厨房内に「日常チェックリスト」や「手洗い手順表」を掲示。
    • モニタリング記録表を壁面に吊るすスペースを確保。
  • 保管棚の設置
    • HACCP記録や清掃記録をまとめて保管できる棚をバックヤードに設ける。
    • 紙の場合はファイル棚、デジタルの場合はタブレットスタンドを設置。
  • 点検しやすい余裕スペース
    • 機器の裏に点検スペースを確保(壁ピッタリ設置はNG)。

トイレなどの清掃チェック表などは、デザイン的にも最初から計画しておいたほうがいい。

設計チェックリスト

  • 汚染・清潔のゾーニングが交差していないか
  • シンク数・用途分けは条例基準を満たしているか
  • 手洗い器は複数箇所に設置されているか(センサー式・レバー式)
  • 冷蔵庫・冷凍庫の容量と区分が確保されているか
  • 食器棚は床から60cm以上で扉付きか
  • 換気・排水が基準を満たしているか
  • 記録のための温度計・掲示板・棚が確保されているか
  • 点検・清掃ができるスペースがあるか

設計に反映する上では「図面に設備を描く」だけでなく、運用時の記録や動線まで設計段階でイメージしておくことが重要です。

参考記事
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