乃木坂・港区の高級焼鳥店に学ぶ店舗デザイン|カウンターと焼場の空間とオペレーションバランス

焼鳥×ワインという選択肢|高級感と親しみやすさを両立するファサード

東京ミッドタウンを背に外苑東通りを歩き、一本奥へ入ると現れる「乃木坂 鳥幸」。外観は控えめだが、明らかに高級感が漂う。木と石を基調としたミニマルなエントランスには暖簾がかかっており、それをくぐると、静かな別世界へと導かれるような感覚を覚える。

焼鳥とワイン、和と洋の境界を越えたコンセプトは、外観にも表れている。設計者の視点で見ると、視認性を犠牲にしながらも、選ばれし者の空間というブランディングに成功している。

ポイントまとめ

  • 路地裏にあることで“発見の価値”を演出
  • 暖簾をくぐる体験が、非日常への入り口に
  • 看板を抑えたことで高級感を創出
  • ファサードの設計が“期待値”を上げている

「白木×間接照明」で演出する空間設計|コの字カウンター越しに焼き場とワインが映える舞台装置

扉を開けてすぐ目に入るのは、コの字型の白木カウンター。その中央奥に構える焼き場からは香ばしい煙が立ち上る。背面には壁一面に広がるワインセラーが鎮座し、和の中に洋の文化が溶け込んでいる。

空間は基本的に間接照明とダウンライトによって構成されており、明るさを絞りながらも料理が引き立つよう光が設計されている。木札に書かれたメニューは、焼鳥の“粋”を感じさせる演出。

また、カウンターの裏には厨房機能が隠されており、ドリンクや洗い場など“見せたくない業務空間”が絶妙にデザインされている。これは「気配は感じさせるが、見せない」という設計哲学の好例だ。

ポイントまとめ

  • 焼き場のライブ感とワインセラーの対比が空間を引き締める
  • 明暗のコントラストで高級感を演出
  • カウンター裏にバックヤードを設けた動線設計
  • 和のディテールに洋の要素を重ねた設計バランス

オペレーションと顧客体験|設計がもたらすサービスの質と効率

スタッフは4名体制で、フロアは3人が対応。注文、配膳、ドリンク、接客すべてが分業されていたが、時折フォローし合う姿も見え、チームワークの良さが際立った。

料理の出てくるテンポも絶妙で、焼鳥の間に出てくる箸休めや一品料理がリズムを整える。お新香や梅大根など、口の中をリセットして次の串を楽しませてくれる設計は、まさに“味の設計”でもある。

この日は竹コースを注文。ビール、白ワインをシェアしながら、焼鳥に合うペアリングを楽しんだ。会計は2人で24,008円。高級路線でありながら、構成と満足度を考えればコストパフォーマンスは良好。

ポイントまとめ

  • 分業と連携でスムーズな接客が実現
  • 味の流れを計算したコース設計
  • ペアリング体験を含めた総合的な設計思考
  • 一人1万円強の価格に対し、高い満足度を提供

設計者視点で見る「鳥幸」の成功要因

乃木坂 鳥幸は、限られた25席という規模ながらも、“高単価×高満足度”を実現する構成が随所に見られた。

  • コの字カウンター+奥の個室で回遊性と集中を両立
  • 焼き場を「魅せ場」にし、厨房は「隠し場」としてデザイン
  • 壁一面のワインセラーが空間に深みと非日常性を与える
  • 和の設えにワインという洋要素をミックスし、外国人客にも訴求
  • 焼鳥という親しみやすい業態を、高級コース料理にまで昇華

設計は単なる空間づくりではなく、運営の最適化とブランドの構築をも担う──そんな思想が感じられる店舗であった。

最後に:飲食店開業を目指す方へのメッセージ

「鳥幸」は、店舗デザインが単なる装飾ではなく、オペレーションと体験価値を高める“仕組み”として機能している好例でした。

空間の余白と光、動線と隠し、素材のバランスが整えば、たとえ席数が少なくても、高単価と満足度を両立することは可能です。

ぜひ、次の店舗づくりの参考にしていただけたら幸いです。

店舗概要

項目 内容
店名 乃木坂 鳥幸
住所 東京都港区赤坂9丁目6-30 乃木坂プレース1F
業態 焼鳥
客単価 ¥10,000~¥14,999
席数 25席

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